チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、米国のリサーチ会社DeepMacro社の通貨モデルに基づき、為替の見通しをお伝えします。
広木 隆が投資戦略の考え方となる礎を執筆しているコラム広木隆の「新潮流」はこちらでお読みいただけます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
DeepMacro FX-1 ユーロのネガティブ・キャリーが早期に解消 ドルのネット・ロングを縮小
DeepMacro
FX-1 STRATEGY Current Portfolio as of 02 Jan 2018
「+」の符号はその通貨のロング(買い持ち)を、「-」の符号はショート(売り持ち)を示す
現在のポートフォリオ (Jan 02) |
豪ドル AUD |
ユーロ EUR |
英ポンド GBP |
NZドル NZD |
カナダドル CAD |
スイスフラン CH |
日本円 JPY |
ノルウェークローネ NOK |
スウェーデンクローナ SEK |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
成長要因 | -16.5 | +18.9 | -3.1 | -21.4 | -8.2 | +1.1 | +11.6 | +11.7 | +7.4 |
キャリー | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
バリュエーション | -8.2 | -2.5 | +14.1 | -10.4 | -6.3 | -18.8 | +6.3 | +18.8 | +14.7 |
グローバル・リスク | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
ポジション調整 | +6.3 | -2.3 | -1.1 | +21.9 | +1.8 | +2.2 | -2.3 | -28.5 | -20.2 |
最終ウェイト | -18.3 | +14.2 | +9.9 | -9.9 | -12.7 | -15.6 | +15.5 | +2.0 | +1.9 |
ネットUSD(米ドル)ウエイト:+13.1
前回のポートフォリオ (Dec 25) |
豪ドル AUD |
ユーロ EUR |
英ポンド GBP |
NZドル NZD |
カナダドル CAD |
スイスフラン CH |
日本円 JPY |
ノルウェークローネ NOK |
スウェーデンクローナ SEK |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
成長要因 | -16.9 | +12.9 | -3.1 | -19.1 | -6.9 | +9.3 | +16.3 | +3.1 | +12.4 |
キャリー | +6.5 | -10.4 | 0.0 | +5.2 | 0.0 | -27.8 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
バリュエーション | -8.1 | -2.5 | +14.1 | -10.3 | -6.3 | -18.9 | +6.3 | +18.9 | +14.7 |
グローバル・リスク | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
ポジション調整 | +10.5 | -7.0 | -3.6 | +11.5 | +4.4 | +12.6 | -7.4 | -13.9 | -19.1 |
最終ウェイト | -8.0 | -7.0 | +7.4 | -12.7 | -8.9 | -24.8 | +15.2 | +8.0 | +8.0 |
ネットUSD(米ドル)ウエイト:+22.8
表の見方について広木が動画(約12分)で解説しています。
※お客様のご利用の端末の環境によっては動画をご覧いただけない場合がございます。あらかじめお客様ご自身の環境をご確認のうえ、ご利用ください。なお、スマートフォンでもご視聴いただけますが、ご視聴いただくには、V-CUBEセミナーアプリケーションのインストール(無料)が必要になります。
・視聴環境
・iPhone/iPad用アプリケーションをインストールする
・AndroidR用アプリケーションをインストールする
PORTFOLIO OVERVIEW(2 Jan 2018)
われわれがシステマティックなG10通貨戦略を"FX-1"と称してリリースしたのは昨年5月だった(マネックスでの提供は5月31日から)。それ以来、昨年のリターンは1.03%であった。FX-1はマルチファクターモデルである。2017年は各ファクターは良好なリターンを挙げた。グロース・ファクターは1.89%、バリュエーション・ファクターは1.25%のリターンだった。キャリー・ファクターは年を通じてマイナスで、-0.3%だった。われわれが「ポートフォリオ・コンストラクション」と呼んでいるリスク管理のルールは-1.81%、つまりリターンを押し下げるように作用した。これらのパラメータはポートフォリオが同じリスクに偏るのを防ぐように設計されており、自ずと相殺される性格で、すべてがプラス寄与となることは期待しにくい。
FX-1にとって2018年は何が主要テーマとなるだろうか?
はじめに挙げられるのは、世界景気が同時進行で良好な成長軌道をたどっていることで、もはやそれはコンセンサスといっていいだろう。広範囲に及ぶ成長というのは誰にとっても好ましいはずである。しかし、それは逆説的だが投資を難しくするものだ。なぜなら国別に差別化が困難になるからだ。国際間の経済成長の短期的かつ相対的な変動が為替のリターンを生むドライバーになるか疑問である。
次にキャリーについて。2017年終盤まではキャリーの差はポジションをとるメリットがあるほど大きくなかったが、いまや変わりつつある。現在の景気サイクルはじゅうぶん成熟しており、いくつかの国では他の国よりもインフレ期待が強まっている。もしこの状態が続けば、2018年はFXマーケットにおけるキャリー取引が正常化するだろう。
FX-1はドルのネットロングを中庸なサイズ(13.1%)に落とすことから2018年をスタートした。これは、前回予想した通り、非常に短期的なユーロのネガティブ・キャリーのシグナルが解消したからである。
ロングは、再び、ユーロ、北欧通貨、円と英ポンド。ユーロは相対的に強いグロース・モメンタムで新年入りしている。日本も堅調な成長が続き、われわれのバリュエーション・モデルでは円はまだ割安である。英ポンドも安い。最近の経済データは相対的には悪くなかった。集中リスクを避けるため、北欧通貨はポジションを減らした。
主なショートはコモディティ通貨 ‐ 豪ドル、カナダドル、NZドルである。ショートしているのはコモディティ価格が弱いからというわけではない。コモディティ価格は昨年、狭いレンジの値動きだったが、総じて2016年よりは上だった。豪ドル、カナダドル、NZドルをショートしているのは、コモディティよりもむしろ住宅関連の要因からである。スイス・フランのショートも継続だが、ここ数週間と同じサイズではない。なぜならスイス・フランはキャリー・ファクターからはもはやショートの対象ではないからだ。
DeepMacro
DeepMacro社は、ビッグデータ技術を利用して、自動的かつリアルタイムにグローバルなマクロ経済を観察・分析し、これを基にマーケットの分析を行う米国のリサーチ会社です。詳しくは、こちらをご覧ください。
DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルの説明
概要
DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルは、DeepMacro 社のグローバル・マクロ・システムに基づき、G10通貨についてシステマティックなポートフォリオ戦略を提供するものです。通貨の変動を説明する様々な要因を捉え、DeepMacro 社のリサーチ・システムの膨大なデータを、流動性が高く割安なポートフォリオに変換します。
キーファクター:
成長要因:
強い景気サイクルにある通貨を買い、弱い景気サイクルにある通貨を売ります。この判断は別のモデル体系であるDeepMacro 社の「Growth Factor」に基づきます。「Growth Factor」は主要国のビッグデータを含む経済成長に関するリアルタイム・インディケーターです。
キャリー:
高いキャリーの通貨を買い、低いキャリーの通貨を売ります。しかし、高キャリーは高リスクでもあります。したがって、リスクに見合うだけのキャリーが得られる場合のみ、このファクターによる投資判断を行います。
バリュエーション:
割安な通貨を買い、割高な通貨を売ります。経済理論では、高い生産性の伸び、高い輸出価格、大きな経常黒字の通貨は高くなることが示されています。このモデルのバリュエーション・ファクターはこれらの要因にもとづき割高・割安の判断をおこないます。
グローバル・リスク:
投資家のリスク回避姿勢が強まった時には、いわゆる「セイフ・ヘイブン(安全な寄港地)」通貨を買います。DeepMacro社では金融市場の価格に基づいて市場のリスク選好度を見積もっており、「グローバル・リスク・インディケーター(GRI)」を算出しています。GRIが点灯した場合、モデルは日本円、スイスフラン、米ドルなどへの買いを指示します。
ポジション調整:
モデルは対米ドルで9通貨のポジションを表示します。モデルは各通貨への集中度制限などリスク管理のルールを適用し、最適化を行った結果としてポートフォリオを構築します。
【お知らせ】「メールマガジン新潮流」(ご登録は無料です。)
チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。