AIによって、日本の金融は劇的に変わる。そして金融行政も劇的に変わらねばならない。と、私は考えています。理由は以下です。
AIが進化した今、もしくは近未来では、私たちはAIに向かってこんなモノを造っている会社の株を買いたいとか、更には例えば「テレビを見ていたらアメリカでは或る病気に関して今までと全く違う治療法を試験的に始めていて、驚異的でかつ安全な良い結果を出しているのだけど、その治療法を支えているのはイスラエルのスタートアップ企業の新技術らしい。その企業の株買いたい」とAIに云うと、そのイスラエル企業はヨーロッパの或る取引所にしか上場していなくても、AIがそれを理解し、私たちの代わりにその株式を扱っている(例えば)フランスの証券会社の口座開設を代理で行ってくれて、更に為替を交換した上でその企業の株を買う、なんてことが実現します。
株に限らず、日本では解禁されていないトークン化された投資商品でも、それが合法的に買える国に於いて、日本国法的にも合法的に口座を開けるなどして、買うことが出来るようになります。それは未来の話ではなく、今、或いは数ヶ月以内の近い将来の話です。そうすると、冒頭に書いたように、「日本の金融は劇的に変わる。そして金融行政も劇的に変わらねばならない。」となります。
日本の金融は何故劇的に変わるか?自明です。日本語しか出来ない日本人も、何の苦労もなく世界中の金融機関に口座を開いて金融サービスを受けることが出来るようになるからです。証券会社も銀行も運用会社も、いきなり世界中のそれらの会社と競争しなければならなくなります。競争相手が、日本国内の会社だけから、一気に世界中の会社になるのです。しかもそれらは、規制業種に限らず、様々なスタートアップ、フィンテック企業も含まれるでしょう。いきなり世界戦国時代です。
そして金融行政も劇的に変わらねばなりません。今まで日本の金融行政は、日本の金融サービス提供会社だけを監督し、日本で登録されていない海外企業に対しては、日本人を海外から勧誘することを禁止する、という手法を実施してきましたが、言語の壁がなくなった、或いはなくなりつつある今、この方法では日本の個人を守ることは出来なくなるのは明らかです。本来の自己責任原則を主軸とした、新しい環境を作って行かないと、最終的に日本人顧客を守ることは出来ません。そして金融産業行政も、世界と同じルール、同じフィールドで日本の金融機関・金融サービス提供会社が戦えるように環境を整えていかないと、日本の金融産業は完全に世界的競争力を失い、世界から時代遅れになります。
AIは、このように、日本の金融を劇的に変え、金融行政も劇的に変わらねばならなくさせるでしょう。特に行政に於いては、やらねばならないこと・やりたいことが無数にある中で、明らかにキャパシティオーバーが発生しているようで、プライオリティを考えて取り組んでいくことが大切だと思います。このAIの問題に対する対応は、金融行政の中で、プライオリティ中のプライオリティだと私は考えます。
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