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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部世界経済のトレンド丸解り!今週の注目レポート

このコーナーでは、フィナンシャル・インテリジェンス部に配属された新人のルミが「世界経済の今・そしてこれから」を掴むために是非読んでおきたい、今週の重要レポート・ニュース記事を紹介します。(原則月曜日更新)

2015年08月10日

米国の個人消費の回復が続くかに注目

「部長、おはようございます!」
「槙原君、おはよう。今週のポイントは?」
「今週は、アメリカでは個人消費の回復とインフレ低迷が、中国では主要経済指標の結果で減速懸念が高まらないかが焦点ですね!」
「ふむ。市場では先週の雇用統計を受けて9月利上げ開始説が更に強まったようだが、米国では他の先進国と同様、インフレ低迷が続く『ローフレーション』状態だから、金融政策運営は難しいぞ。」
「インフレ、デフレでもなくて、ローフレという言葉があるんですね。」
「インフレは高過ぎず低過ぎず、ふんわりした『スフレ』みたいのが理想かもしれんな。」
「部長・・・ダジャレ禁止のオフレ(御触れ)書きがでるかもしれませんよ!笑」
「それだけは堪忍して欲しいものだなぁ、、、社長、シルブフレ!」

詳細は以下をご覧ください。

今週の注目レポート・重要ニュース

【1.米国】

先週の米国市場は、早期の利上げ懸念や原油価格の下落、大手メディア株の下落なども重石となって下げました。ダウ平均は2011年8月以来4年ぶりの7日続落となり、週間で320ドル近く下げ、2月2日以来およそ半年ぶりの安値水準で取引を終えています。

1-1.ISM景況感指数

3日に発表された7月のISM製造業景況感指数は52.7と前月から0.8ポイント低下し、横ばいとみていた市場予想を下回りました。ISM製造業景況感指数は冬場から春先にかけて落ち込んだあと、前月まで2ヵ月連続の回復をみせましたが、一旦足踏みとなってしまいました。一方で5日に発表された7月のISM非製造業景況感指数は60.3と前月の56.0から大きく上昇し、市場予想を上回って2005年8月以来10年ぶりの高水準となりました。これを受けて9月の利上げが意識され金利が上昇、ドル円では円安が進み125円台を付ける場面もありました。

1-2.米個人消費支出

3日に発表された6月の個人消費支出(PCE)は前月比0.2%増と5カ月連続での増加し、個人所得も0.4%増となりました。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)が重視する米コアPCEデフレータは前年同月比1.3%の上昇に止まり、FRBが目標とする2%を依然として下回っています。

1-3.米雇用統計

7日に発表された米雇用統計で失業率は横ばいの5.3%で、非農業部門雇用者数は前月から21万5千人増となり市場予想をわずかに下回りました。しかし、5月が25万4千人増から26万人増に、6月が22万3千人増から23万1千人増にそれぞれ上方修正され、3カ月間の平均は23万5千人増となり、景気回復の目安とされる20万人を大きく超えました。この結果を受けてマーケットでは、労働市場の順調な回復が確認されたとして9月の利上げが意識されることとなりました。ただ、FRBのイエレン議長が重視する賃金は平均時給が前年同月比2.1%増と市場予想を下回ったことから、雇用統計発表後に125円台を付けたドル円はその後124円台前半と円高に振れました。

1-4.米小売売上高

13日に7月の米小売売上高が発表されます。前月の小売売上高は前月比マイナス0.3%とプラスを見込んでいた市場予想を大きく下回りました。7月はプラスに転じる見通しで、個人消費の失速が一時的なものだったのかを確認するうえで注目されます。

【2.欧州】

先週の欧州の主要株価指数は上昇しました。ドイツのDAX指数、フランスのCAC40指数ともに週間で1%を超える上げとなりました。5週間ぶりに取引を再開したギリシャの株式市場は。アテネ総合指数が取引を再開した3日に16%安と急落で始まると、4日と5日も続落となりました。しかし、週後半は上昇に転じ、週間では15%余りの下落となっています。
ユーロ/ドルは、4日には米Fed高官のタカ派発言で1.0848ドルの安値をつけましたが、その後は1.09ドル台へ回復基調となりました。7日の米雇用統計発表後の一時的なドル高を受けて再び1.08ドル台前半へ下落する場面もありましたがすぐに1.09ドル台を回復するなど、結果的には1.08ドルから1.10ドルの間で、レンジ内で方向感のない展開が続きました。

2-1.ZEW独景気予測指数

11日に8月の欧州経済研究センター(ZEW)独景気予測指数が発表されます。8月は5ヵ月ぶりの上昇が見込まれており、先月27日に発表された7月の独Ifo企業景況感指数に続いてドイツの景況感の改善が確認できるかが注目されます。

2-2.ユーロ圏域内GDP

14日に4-6月期のユーロ圏GDP速報値が発表されます。1-3月期はエネルギー価格や食料価格の下落、ユーロ安などで前期比0.4%増と2013年4-6月期以来ほぼ2年ぶりの伸びとなりました。4-6月期は前期比0.4%増と同ペースの成長が見込まれています。

【3.日本】

先週の日本市場は上昇しました。米国市場の下落を受けて軟調なスタートとなったものの、日経平均が節目の20,500円近辺で底堅さをみせると、週後半はドル円が円安に振れたことを好感して堅調となりました。日経平均は週間で140円近く上げています。
ドル/円は、4日の米Fed高官のタカ派発言や5日の米ISM非製造業景況指数の予想比大幅上振れを受けて125円台へ上昇しました。7日の米雇用統計発表後は、月間20万人超の雇用創出ペース維持の確認が一時的なドル買いにつながり125.07円の高値をつけましたが、平均時給の伸びが市場予想を下回ったこともあってドル利食いが優勢となり、124円台前半へ反落して引けました。
ユーロ/円は、ユーロ安と共に5日に135円丁度へ下落する局面もありましたが、その後すぐに反発し、結局136円丁度を中心とした比較的安定的な動きとなりました。

3-1.日銀金融政策決定会合

6日、7日と日銀の金融政策決定会合が開催され、7日に結果が発表されました。予想通り金融政策に変更はありませんでした。黒田東彦総裁は会合後の会見で、最近の輸出や個人消費の鈍化は一時的との見方を示し、消費の基調判断に自信を示しました。また、物価については2016年度前半に2%の物価上昇を実現する目標の達成時期が若干前後することはあり得るとの見解を示したものの、予想物価上昇率は比較的維持されているとして、物価の先行きに対する見方を大きく変えるような発言はありませんでした。

3-2.景気ウオッチャー調査

10日に7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)が発表されます。前月は現状判断DIが51.0で前月比2.3ポイント低下し2カ月連続で悪化しました。また、前月は2-3カ月先をみる先行き判断DIも前月比1.0ポイント低下の53.5と7ヵ月ぶりに悪化しています。

3-3.決算発表

3月期決算企業の第1四半期決算発表も先週末のピークを過ぎ一段落となります。こうしたなか日本経済新聞の集計では、先週末までに決算を発表した上場企業の4-6月期の経常利益は前年同期比で24%増の大幅増益となった模様です。

【4.中国】

先週の上海市場は上昇しました。上海総合指数は下落して始まったものの、200日移動平均線にサポートされる格好で底堅さをみせると、空売り規制の強化を受けて4日には3%を超える大幅高となりました。大幅反発の後ということもあって5日と6日は軟調でしたが、週末に大幅上昇となったことで、上海総合指数は週間で2%余りの上昇となっています。

4-1. 中国製造業PMI

3日に発表された7月の財新中国製造業購買担当者景気指数(PMI)確報値は47.8と、速報値の48.2から0.4ポイント下方修正されました。その結果、前月から1.6ポイント悪化し2年ぶりの低水準となりました。財新中国製造業PMIは5カ月連続で景気判断の分かれ目となる50を下回っています。

4-2.中国貿易統計

8日に発表された7月の中国の貿易統計によると、輸出が前年同月比8.3%減と2カ月ぶりのマイナスとなったうえ、輸入も同8.1%減と9カ月連続で前年を割り込みました。ともに市場予想を上回る減少となったことで中国経済の減速への懸念が一段と高まっています。

4-3.中国消費者物価指数(CPI)

9日に発表された7月の中国消費者物価指数(CPI)は前年同月比で1.6%上昇しました。6月の1.4%から上昇率は拡大しましたが、政府が掲げる通年平均の目標である3.0%は大きく下回っています。

4-4.中国貿易統計

12日に7月の中国小売売上高、鉱工業生産、固定資産投資など主要経済指標が発表されます。市場では概ね前月と同程度の前年比増加率が予想されていますが、予想を下回るようだと中国の景気減速懸念が強まりそうです。

グローバル・マクロ・ポリシー・ビュー(世界経済・政策の基本観)

  1. 日本(前回からの変更なし)
    日銀は8月の金融政策決定会合で、最近の輸出や個人消費の鈍化は一時的で、原油安の物価押し下げ効果についても限定的との見方を示しており、目先の追加緩和を示唆していません。また、7月金融経済月報ではインフレ指標としてCPI除く生鮮食品・エネルギーが前年比+0.7%へ上昇していることも示し始め、インフレ判断が原油価格に左右されにくい体制を構築しつつあるように見受けられます。更に、黒田総裁が6月10日にこれ以上の円安は考えにくいと発言したことで、円安をもたらす追加緩和を計画していないことも示唆されています。
  2. 米国(赤字が前回からの変更点)
    7月28-29日に開催されたFOMCでは、労働力の活用不足の度合いについて「いくらか」という表現を削除して単に「縮小した」としたほか、引き締め時期についても、前回声明文では労働市場が「さらに改善する」と確信した場合としていたのを、「さらに幾分改善する」としたことから、9月利上げ開始に更に近づいたと捉えられました。その後も4日にロックハート・アトランタ連銀総裁(投票権あり)が9月利上げに前向きな発言をするなど、タカ派発言も増えつつあります。但し確約は与えられておらず、今後の経済指標発表を受けて思惑が振れる状況は続きそうです。
  3. 欧州(前回からの変更なし)
    7月23日、ギリシャ議会は第3次支援協議開始の条件とされた追加的な改革案の法制化についても可決し、8月後半とみられる第3次支援合意に向けて進展がみられており、ギリシャは市場の焦点からはずれつつあります。ユーロ圏ファンダメンタルズに大きな変化が見られない中、ECBは2016年9月まで予定通り、現在の資産購入プログラムを継続するとみられます。
  4. 新興国(前回からの変更なし)
    中国では、株式市場の不安定継続に加え、7月分の財新および公式製造業PMIの悪化や輸出入の鈍化など、景気減速懸念が再び高まっています。景気下支えのため、今後数か月間に人民元相場の許容変動幅が拡大され、人民元安誘導が行われる可能性が高まっています。

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