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ストラテジーレポート

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。

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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

注目銘柄の押し目買い PART1(サービス・セクター編)

日経平均2万円というのはシンボリックな値かもしれないが、数字自体に意味はなく、1万9998円と2万円の差はわずか2円。そこにどれだけの意味を見出すかは、ほとんど哲学論争、もしくは空虚な概念論であって、株価が2万円という値をつけないことに少なくとも経済的な観点からは特段の意味はない。ファンダメンタルズ面からは日経平均2万円はじゅうぶん正当性があるし、PERの過去平均である15倍を基準に考えれば、2万1000円でも不思議はない。

それが前回のレポートで述べたことだ。ファンダメンタルズからは妥当な値であっても、今の市場環境ではそこまでの評価を与えにくい。不透明材料をリスク要因として割り引く必要があるからだ。割引率が大きいということはPEで高いマルチプルを付与できないということである。今週のマーケット展望で述べた通り、この先も波乱含みの展開が予想される。しばらくマーケット全体が持続的に上昇するような相場展開に賭けるのはリスク対比で賢明なストラテジーとは思えない。ここは個別銘柄の押し目買いを検討する局面と考える。

「押し目待ちに押し目無し」を地でいくような相場が続いてきたリクルートHD(6098)に、やっと押し目がきた。先週末に一時520円(8%)安の5,730円まで下落した。きっかけは、グーグルが求人情報サイトの提供を開始すると発表したことだ。リクルートが米国で買収し展開する「インディード」はいまやドル箱事業に育ったが、今回のグーグルの発表はその「インディード」に正面からぶつかる。競争激化による収益悪化が嫌気された格好だ。

リクルートの株価は週明けの昨日も続落した。25日移動平均を突き抜け75日移動平均で切り返し、陽線で終った。ここでひとつ押し目買いを入れるにはよいタイミングと見る。

リクルートHDの株価推移

出所:ブルームバーグ

リクルートが「インディード」を買収したのは5年前。先行者としての優位性は崩れないだろう。リクルートは、海外展開が難しいといわれる人材派遣などのサービス業で、海外売上高比率が35%を超えるグローバル企業の顔を持つ。リクルートの海外事業の強みは、国内で培ったノウハウである。自前進出にこだわらず、現地のマーケットを良く知る地元企業を買収し、リクルートの経営手法や事業運営の知見を「輸出」するのだ。こうしたタイプの「輸出企業」の事業モデルは、為替に影響される従来型の輸出企業と違って底堅さがある。

海外事業に限らず、リクルートという企業を評価する軸はいくつもある。人材ビジネスはいうまでもなく「働き方改革」というど真ん中のテーマだし、ほかにもシェアリング・エコノミーだったり、ビッグデータだったり、もっとも旬なテーマで買っていける切り口が複数ある。

なによりも、リクルートという企業の価値は、「人」のちからである。昨今、やたらロボットだとかAIだとか、「人と機械の競争」ということが言われる。であれば、これからは何が鍵となるか。「機械」ではない。AIにせよIoTにせよ、「機械」はただのインフラであり、社会の公共財となる。であれば、なおさら、これからはますます、「人」のちからそのものが鍵となる。そうした「人」のちからをフルに発揮して勝てるビジネスをおこなってきたのがリクルートだ。

公私ともに非常にお世話になっている楠木建・一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授がリクルートを評した名言がある。

「リクルートからは経営者が輩出している。経営センスが育つ土壌にあふれているようだ。あの会社には担当という概念がない。入社即、商売してこい、商売を作ってこいと。これが経営人材の出る土壌を作る。」

まさに「企業とは人」である。リクルートのような企業は、そうざらにあるものではない。

リクルートHDは東証33分類の業種別株価指数の「サービス業」で時価総額ウエイト最大の企業である。この「サービス業」セクターで年初来リターンの上位銘柄を見ると、まさに現在の日本が抱える社会問題とそのソリューション(解決)を事業にしている銘柄のオンパレードである。当然のようにそうした銘柄は好パフォーマンスを挙げてきたが、ここにきて調整しているものも散見される。リクルート同様に、押し目を拾うチャンスであると思う。

リンクアンドモチベーション(2170)
エラン(6099)
東京個別指導学院(4745)
M&Aキャピタルパートナーズ(6080)

これらの銘柄を有望と見る背景については、次回のオンラインセミナー「広木隆のマーケット展望ウィークリー」(6/5)で解説するので是非ご視聴ください。ポイントは、人手不足⇒人材派遣、と短絡的に考えないことだ。確かに、サービス業の高パフォーマンス銘柄には人材派遣業が多いが、そうした状況がこの先、何年も続くかどうか。より本質的な構造問題に目を向けたほうがよいと思う。

また、「注目銘柄の押し目買いPART2」では、ライオン(4912)、イビデン(4062)、任天堂(7974)、OLC(4661)、東レ(3402)、そのほか複数の銘柄について語るつもりである。そちらも併せてご参考にされたい。

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