「部長、おはようございます!」
「槙原君、グッド・モーニング。今週のポイントは?」
「今週も中国株価を眺めた神経質な展開が続きそうで、世界同時株安の流れ
に歯止めがかかるかが注目されます」
「ふむ、どうやったら歯止めがかかるのかね?!」
「これまで中国当局が様々な株価対策をとってもダメだったので、放置プレイしかないでしょう!」
「そうかもしれんな。PKO(株価維持操作)で人為的に相場を下支えても結局また下がってしまって、当局はTKO(テクニカルノックアウト)だな。膿を出し切らなければ、持続的反発にならないだろう」
詳細は以下をご覧ください。
今週の注目レポート・重要ニュース
【1.米国】
先週の米国市場は大きく下落しました。中国経済の減速懸念が強まったことや、原油先物価格が一時40ドルを割り込み6年5ヵ月ぶりの安値を付けるなど、原油価格が下げ止まらないことも嫌気されました。ダウ平均は週間で1,000ドル余り下げ、節目の17,000ドルを割り込んで年初来安値を更新して週の取引を終えています。また、ナスダック総合株価指数も節目の5,000ポイントを下回って2月2日以来ほぼ半年ぶりの安値水準となっています。
1-1.米CPI
19日に発表された7月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%上昇し6カ月連続のプラスとなりました。また、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も前月比で0.1%上昇となりました。ともに市場予想は下回りましたが、コア指数の前年比は1.8%上昇で前月と同じに留まっており、米連邦準備理事会(FRB)が利上げに動きにくくなるほどの内容ではなかったとしてマーケットの反応は限定的でした。
1-2. FOMC議事要旨
19日に米連邦準備理事会(FRB)は7月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を発表しました。議事要旨では、引き締めに近づきつつあるとの認識が示された一方で、労働市場のスラック(たるみ)縮小にも拘らず全般的な賃金上昇に繋がっておらず、賃金上昇加速の時期や物価加速への波及についてかなりの不確実性が残るとされるなど、インフレ低迷についての議論が目立ちました。このためマーケットではハト派的と受け止められ、早期の利上げシナリオの不確実性が若干高まる結果となりました。
1-3.住宅関連指標
18日発表の7月の米住宅着工件数は年率換算で前月比0.2%増の120万6000戸となり、2007年10月以来7年9カ月ぶりの高水準となりました。また、20日に発表された7月の米中古住宅販売も前月比2%増の559万戸となり、市場予想を上回って2007年2月以来の高水準となりました。住宅市場の力強い回復が改めて確認された格好です。今週は25日に6月の米S&Pケース・シラー住宅価格指数と7月の米新築住宅販売件数の発表が予定されています。
1-4.米GDP改定値
27日に4-6月期の米実質国内総生産(GDP)改定値が発表されます。速報値の前期比年率2.3%増から3.2%増程度へと大幅に修正される見込みで、予想通りの上方修正となればマーケットでは早期の利上げ観測が再び高まる可能性があります。
1-5.米個人消費支出(PCE)
28日に7月の個人消費支出(PCE)が発表されます。FRBが重視する米コアPCEデフレータは前月比0.1%上昇、前年比1.3%上昇が予想されており低調が続く見込みですが、予想比で上振れるようだと早期の利上げが意識されるかもしれません。
1-6.ジャクソンホールでの経済シンポジウム
27日からジャクソンホールでカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウムが開催されます。今回イエレンFRB議長は出席しませんが、29日にフィッシャーFRB副議長が米国のインフレについて講演する予定で、その内容に注目が集まりそうです。
【2.欧州】
先週の欧州の主要株価指数は中国市場の大幅下落を受けて大きく下げました。ドイツのDAX指数が週間で8%近く下落したほか、フランスのCAC40指数も週間で6%を超える下げとなりました。
ユーロ/ドルは、ハト派的な米FOMCを受けたドル安、および中国株安に中国の想定以上の景気減速があるとの懸念からユーロが避難通貨としてとらえられた面もあり、1.10ドル台から一時1.14ドル丁度手前まで大きく上昇しました
2-1.ユーロ圏製造業PMI速報値
21日に発表された8月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は前月比横ばいの52.4となり、低下を見込んでいた市場予想を上回りました。
2-2.独Ifo企業景況感指数
25日に8月の独Ifo企業景況感指数が発表されます。今回は前回の108.0から小幅な低下が見込まれており、回復一服となりそうです。
【3.日本】
先週の日本市場は中国市場の大幅下落を嫌気して大きく下げました。19日に300円を超す下落となった日経平均は、世界的なリスクオフムードが広がるなか20日に190円近く、さらに21日には600円近くも下げました。この結果、日経平均は週間で1,100円近く下落し20,000円の大台を割り込みました。
ドル/円は、週初は124円台で推移していましたが、19日の米FOMC議事要旨がハト派的な内容となったこと、中国株安が世界的な株安につながり、米中長期債利回りが低下したこともあって、122円割れへ大幅下落しました。週明けには一時121円を割り込みました。
3-1.消費者物価指数
28日に7月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。今回は生鮮食品を除くコア指数が前月の0.1%増からマイナスに転じる見通しで、追加の金融緩和への期待が高まる可能性もありそうです。
【4.中国】
先週の上海市場は大きく下落しました。18日には上海総合指数が一時4,000ポイントの大台を回復する場面もみられましたが、買いの勢いが続かなかったことで失望感が広がり利益確定の売りから6%余りの大幅な下げとなりました。その後19日こそ反発をみせたものの、金融緩和期待の後退や中国製造業PMIの悪化などから20日、21日と連日で大幅安となったことで上海総合指数は週間で11%を超える下落となり、これまでサポートとなってきた200日移動平均線を割り込んで取引を終えました。週明けも大幅に続落して始まっています。
4-1. 中国製造業PMI
21日発表された8月の中国財新製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は改善を見込んでいた市場予想に反して7月確報値の47.8から0.7ポイント低下し47.1となりました。景気判断の分かれ目となる50を6カ月連続で下回って6年5カ月ぶりの低水準となったことで、マーケットでは中国景気減速懸念が一段と高まりました。
- [日本]チーフ・ストラテジスト広木隆の「ストラテジーレポート」
- [日本]シニア・マーケットアナリスト金山敏之の「投資のヒント」
- [日本]フィスコの「週刊マーケット展望」(ログイン後限定レポート)
- [日本]J.P.Morgan(J.P.モルガン)社やTIW社のアナリストレポート(ログイン後限定レポート)
- [日本]主要日本企業決算カレンダー
- [米国]主要米国企業決算カレンダー
- [米国]米国株 Market Pick Up 今週の注目ポイント
- [中国]中国株 Market Pick Up 今週の注目ポイント
- [その他]J.P.モルガンのマクロ経済レポート ウィクリー・データ・ウォッチ(ログイン後限定レポート)
グローバル・マクロ・ビュー(世界経済の基本観)
- 日本(後退していた追加緩和期待が再び高まった可能性)
日銀は8月の金融政策決定会合で、最近の輸出や個人消費の鈍化は一時的で、原油安の物価押し下げ効果についても限定的との見方を示しており、目先の追加緩和を示唆していません。17日発表の4-6月期GDPもマイナス成長でしたが想定範囲内で、日銀の景気認識に大きな変化はないとみられます。この間、7月金融経済月報より、インフレ指標としてCPIから生鮮食品だけでなくエネルギーを除いた指標も掲載し始め、インフレ判断が原油価格に左右されにくい体制を構築しつつあるように見受けられます。但し、足許の株安・円高により実質的な金融引き締めとなっていることから、日銀のタカ派トーンが和らぐ可能性が出てきています。 - 米国(利上げ後ずれリスクが更に高まる)
7月28-29日に開催されたFOMCでは、労働力の活用不足の度合いについて「いくらか」という表現を削除して単に「縮小した」としたほか、引き締め時期についても、前回声明文では労働市場が「さらに改善する」と確信した場合としていたのを、「さらに幾分改善する」としたことから、9月利上げ開始に更に近づいたと捉えられました。もっとも、11日の人民元切り下げ後の他のアジア主要通貨のつれ安を受けたドル高地合いや、中国景気減速懸念の高まりから原油など資源価格が下落しインフレ下押し圧力となっている中、米利上げ開始の後ずれ懸念が更に高まっています。 - 欧州(前回からの変更なし)
ギリシャではチプラス首相が9月20日の総選挙実施を表明しましたが、欧州委員会などは第3次支援およびそれに必要な改革は影響を受けないと楽観しているようです。ユーロ圏景況感は明確に悪化しておらず、ECBは現在のところは2016年9月まで予定通り、現在の資産購入プログラムを継続するとみられます。 - 新興国(追加刺激策期待が更に高まる)
中国では輸出入、鉱工業生産や固定資産投資などの主要経済指標が軒並み市場予想を下回り景気減速懸念が高まっています。8月11日に人民銀は人民元の切り下げを行いましたが、完全自由化に向けた一歩とみるべきで、切り下げ幅は小幅で他のアジア通貨安もあって景気対策としての効果は非常に限定的とみられます。株価の下落基調が止まらない中、当局による追加的な財政刺激や金融緩和(利下げ、預金準備率引き下げ)の可能性が高まっています。
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