金融テーマ解説

チーフ・アナリスト 大槻奈那が、毎回、旬な金融市場のトピックについて解説します。市場の流れをいち早く把握し、味方につけたいあなたに、金融の「今」をお伝えします。

大槻 奈那 プロフィール

金融政策に関する個人投資家アンケート~マイナス金利の不人気は定着するも、投資家マインドはやや改善

マネックス証券では、10月31日~11月1日の金融政策決定会合を前に、個人投資家向けに日銀の金融政策に関するサーベイを行った(実施期間:10月7日~11日、回答者数:745名)。

個人投資家の間には、マイナス金利政策に対する否定的な見方がすっかり定着してしまった。「どんな金融政策が取られれば、投資に強気になれるか」という定例の質問に、今回初めて、「マイナス金利の停止(利上げ)」という選択肢を設けたところ、これまで最も支持されていた「ETF/JREITの更なる増額」をおさえ、最多の回答を得た(図表5)。

「日銀のマイナス金利はインフレ期待醸成に貢献しているか」という問いに対しては、過半数の50.3%の個人投資家が「貢献していない」と答える一方、「貢献している」という答えは11.1%とこれまで同様低位に留まった(図表1)。

一方、投資や消費を積極化する動きも若干ながら見え始めた。「マイナス金利導入以降、投資意欲が高まった」という回答は、依然として「減退した」とする回答を下回っているものの、比率は前回調査からは若干持ち直し、直近3回の調査の中では最も高かった(図表4)。

直近のマネックス証券「個人投資家サーベイ」(16年10月調査)によれば、個人投資家は日本の株式市場に対してやや強気になっている(図表7)。Brexit問題の落ち着きや大統領選の不透明感後退等の海外要因も関係しているが、金融政策に当面大きな動きはなさそうだという見方が広がったことも寄与しているとみられる。

来週の金融政策決定会合で政策維持が決定されれば、個人投資家のセンチメントは更に回復に向かう可能性が高いだろう。

【金融政策に関するアンケート結果のポイント(10月7~11日実施)】
● 「日銀のマイナス金利導入はインフレ期待醸成に貢献しているか」という問いに対しては、過半数の50.3%の個人投資家が「貢献していない」と答える一方、「貢献している」という答えは11.1%とこれまで同様低位に留まった(図表1)。

● 1年前に比べて「家計を引き締めている」という回答は、「緩めている」という回答を大きく上回る34.8%に上った(図表2)。しかし、9月調査よりは消費にやや積極的になっており、「家計を引き締めている」とする回答の比率は低下した。

● 消費に関する補足質問として、今回「現在の金融・経済情勢下では、貯金を増やすべきだと思うか、取り崩して投資や買い物をすべきだと思うか」と聞いたところ、「貯金を取り崩して買い物や投資をすべき」という回答は、「貯金を増やすべき」という回答を若干ながら上回った(図表3。前回調査なし)。

● マイナス金利以降の投資意欲の変化度合いについて訊ねたところ、前回までの調査同様、「投資意欲が高まった」という回答は、「減退した」という回答を下回った(図表4)。但し、「高まった」という回答は13.7%と、前回調査の8.8%からは改善し、依然低位ながら直近3回の調査の中では最も高かった。

● 「今後日銀がどのような金融政策を行ったら、投資に強気になれるか (複数回答可)」という質問について、今回初めて、「マイナス金利の停止(利上げ)」という選択肢を設けたところ、これまで最も多かった「ETF/JREITの更なる増額」という回答を上回り、一番多くの支持を得た(図表5)。

● 一方、追加緩和の時期の予想を訊ねたところ、「次の金融政策決定会合で追加緩和がある」(今回でいえば11月1日)という回答は、今回わずか2.3%で、過去の調査の中で最も低かった(図表6)。

● 同時に実行したマネックス証券「個人投資家サーベイ」(16年10月調査)によれば、個人投資家は日本株に対してやや強気になっている(図表7)。

これは、上記の通り、不人気が定着したマイナス金利について、"深掘り"されるというリスクが遠のいたことが背景の一つにあると思われる。来週の金融政策決定会合でも、市場の予想通り、マイナス金利の深掘りがなければ、個人投資家のセンチメントは更に改善する可能性があるだろう。

● 回答者のプロフィールについては調査の概要と回答者の属性を参照。株式投資の経験が10年以上の割合が60%と高いのが特徴である。

【アンケート結果のデータ】(出所はすべてマネックス証券の実施したアンケート調査)

【図表1】日銀のマイナス金利導入は、インフレ期待の拡大に貢献していると思いますか(直近回答者数745名)

【図表2】昨年の今ごろと比べて、家計支出を引き締めていますか、緩めていますか(直近回答者数745名)

【図表3】現在の金融・経済情勢下では、貯金を増やすべきだと思いますか、取り崩して買い物や投資をするべきだと思いますか(回答者数745名)

【図表4】今年1月の日銀のマイナス金利導入決定後、あなたの投資意欲に変化はありましたか?(直近回答者数745名)

【図表5】日銀がどのような金融政策を行ったら、投資に強気になれますか?(複数回答)

【図表6】次回の金融政策決定会合で追加緩和が実施されると回答した割合(毎回の調査で「次の追加緩和はいつだと予想しますか?」という質問に対して、それぞれの時点で、最も近い金融政策決定会合で追加緩和があると思うと回答した人の比率。直近回答数745名)

【図表7】市場に対する見方(DI=「上昇すると思う」と回答した割合から「下落すると思う」と回答した割合を引いたポイント)

(出所)マネックス証券「個人投資家サーベイ」16年10月調査

■調査の概要と回答者の属性
調査方式: インターネット調査
調査対象: マネックス証券に口座を保有している個人投資家
回答数: 745
調査期間: 2016年10月7日~10月11日

(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。

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