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山本雅文「FX戦略ウィークリー」

シニア・ストラテジスト 山本雅文が国内外のファンダメンタルズ分析を基に、主に米ドル、ユーロ、豪ドル相場の先行きの見通しを分かりやすく、かつ深く鋭く分析し予想するレポートです。

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シニア・ストラテジスト 山本 雅文のレポートは2015年10月30日をもって更新は終了しました。これまでご愛読いただきありがとうございました。

2015年07月17日

三つのランド

今週の特徴:チプラスの勝利でドル高ユーロ安
今週は、Yellen議長議会証言や米経済指標の一部上振れを受けた米ドル高、およびギリシャ第3次支援にむけた進展がみられたことも米利回りとドルの上昇に繋がったことから、米ドルが全体的に上昇した。中でも、乳製品価格の下落が続く中でNZドルの下落が大きかったほか、原油安やカナダ中銀の予想外の利下げを受けてカナダドルの下落が大きくなるなど、コモディティ通貨の下落が目立った。ドル/円も124円台に乗せてきており、本邦政府の円安許容度が注目される。この間、ユーロはギリシャ懸念後退で下落、株高・利回り低下と合わせQEトレード再開を想起させる動きとなった。

来週の見通し:三つのランド
来週は三つのランド、即ちNZランド準銀(RBNZ)金融政策、イングランド銀行(BoE)議事要旨そして南アランド、が注目となる。NZドルはRBNZの追加利下げだけでなく、先行きの追加利下げも示されれば続落しそうだ。他方、ポンドはBoE高官のタカ派発言が相次ぐ中で、今回の議事要旨で既に利上げ票が投じられていたことが明らかになれば続伸しそうだ。南アランドは、SARB会合直前に発表されるCPIが上振れする場合には、利上げはないにしてもSARBのタカ派化リスクが意識され上昇圧力となる。
ドル/円は翌週に米FOMCを控え材料が少なく、124円丁度近辺で方向感なく推移する可能性が高いほか、ドル材料で軟調となっているユーロ/ドルもドルに方向感が出なければ動きにくくなりそうだ。下落基調の豪ドルは、NZドルへのつれ安に注意する必要がある。

来週の経済指標カレンダーはこちら

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【1.ドル/円】

今週レンジ:121.93~124.23円 (想定より1円以上上振れ)
(前週時点の予想:120.0~123.0円)
ドル/円は、週明けの時点で12日のユーロ圏首脳会合でギリシャ支援に向けて合意が遅れたことから、13日早朝に前週末の122円台後半から一時121.93円下落してスタートした。もっとも、下落幅は非常に限定的で、かつその後17時間続いた首脳会合でギリシャ向け第3次支援に向けた協議を開始する条件について合意に至ったことが東京時間夕方に伝わると123円を上抜けした。翌14日には米6月小売売上高が予想外のマイナスを受けて一時123円を割り込んだがすぐに反発し、下値の底堅さを印象付ける動きとなった。15日にはYellen・FRB議長の議会証言でハト派度が後退したとの受け止め方が広がったこと、そして鉱工業生産など米経済指標が予想を上回ったこともあって124円手前までドルが続伸した。16日には、前日のギリシャ議会での改革法案可決を受けてユーロ圏が70億ユーロのつなぎ融資を、そしてECBが定例政策理事会でギリシャ銀行向け緊急流動性支援(ELA)の9億ユーロ拡大が決定されるなど、目先のギリシャの流動性問題が解決に向かったことから、リスク回避の動きを受けて米利回りの上昇と共にドル高の展開となり、124.21円までじり高となっている。
この間、ドル/円相場と連動性が高い米2年債利回りは概ね横這いで、米10年債利回りはむしろ低下しており、必ずしも米利上げ期待の高まりによるドル高ではなさそうだ。

来週予想レンジ:123.0~125.0円
ドル/円は、翌週に米FOMCを控え日米材料が少ない中、ギリシャを中心としたリスク回避の後退傾向から下支えされやすい地合いの一方、124円台は本邦政府・日銀の円安牽制姿勢(黒天井)が意識されやすい中で、124円丁度前後でもみ合いとなり方向感が出にくく推移する可能性が高そうだ。材料面では、米国では22日の中古住宅販売や24日の新築住宅販売程度しか重要指標発表がない。米中古住宅販売は前月から増加見通しのためドル高バイアスがあるが、これだけではFedの金融政策スタンスを大きく変える材料とはならないだろう。

【2.ユーロ】

今週レンジ:1.0856~1.1197ドル、134.75-137.80円 (対ドルは想定通り、対円は上振れ)
(前週時点の予想:対米ドル1.080~1.120ドル、対円132.0~137.0円)
ユーロ/ドルも、週末12日のユーロ圏首脳会合でのギリシャ問題未決着リスクから、週明けに1.11ドル台半ばから1.11ドル割れへ小幅に下落してスタートしたが、第3次支援に向けた協議を開始する条件で合意したことが伝わると、一旦1.12ドル丁度手前までユーロ買いになった後はむしろ急反落し、13日中に1.10ドル割れとなった。更に、15日にはYellen議長議会証言のハト派度後退や米経済指標の上振れを受けたドル高により1.09ドル台半ばへ続落し、16日のギリシャ向けつなぎ融資決定やECBの緊急流動性支援拡大といったギリシャにとってポジティブなイベントはむしろ米利回りとドル高をもたらし、1.0856ドルへ続落、5月27日の安値である1.0819ドルに近づいた。
ユーロ/円も、対ドルでの下落が円よりユーロの方が大きかったため下落基調となった。週明け早朝に137円丁度近辺から135円台半ばへ下落してスタートした後、首脳会議のギリシャ支援協議条件の合意を受けて137.80円の高値へ一瞬上昇したがすぐに反落、16日にかけて134.75円へじり安となった。
結局、ユーロ圏ではギリシャ支援問題の進展を受けて、ユーロ安、株高、高債務国債券高(利回り低下)といったQEトレードのような動きが見られた一方、ドイツ国債利回りはあまり低下していない。

来週予想レンジ:対米ドル1.0750~1.110ドル、対円133.5~137.0円
ユーロ/ドルは主にドル高を反映して軟調となっているが、来週は米国の材料が少ないことからドルに方向感が出なければ動きにくくなりそうだ。但し、ドル高傾向が継続し、5月27日の直近安値(1.0817ドル)を下回るとユーロ安が加速するリスクがある。なお、来週のイベントとしては24日にユーロ圏7月PMIがあるが、総合指数は54.2と前月から横這いの予想となっており、かつ目先ユーロ圏景気の変化がECBの金融政策スタンス変更に繋がる可能性が低いこともあって、あまり材料にはならなそうだ。

【3.豪ドル】

今週レンジ:対米ドル0.7350~0.7489ドル、対円90.51~92.43円 (想定レンジ内)
(前週時点の予想:対米ドル0.730~0.760ドル、対円88.0~93.0円)
豪ドル/米ドルは、ギリシャ問題の影響を殆ど受けず、14日発表の豪NAB企業景況感・信頼感の予想比上振れ、そして15日の2QGDPを初めとする中国主要経済指標の予想比上振れを受けて0.74ドル丁度近辺から0.7489ドルへ小幅上昇した。その後、15日にはYellen米FRB議長議会証言のハト派度後退、米経済指標の上振れからくる米ドル高に加えて、世界乳製品取引(GDT)オークション価格の10.7%下落を受けたNZドル安や、カナダ中銀の予想外の利下げを受けたカナダドル安にもつれたかたちとなって急反落し、一時0.7350ドルと年初来安値を更新し09年5月以来の低水準となった。但し16日には中国株価の反発などを眺め0.74ドル台へ小反発している。
豪ドル/円は、週全体としては対米ドルで豪ドルよりも円の方が下落が大きかったことから、豪ドルじり高傾向となった。週明けに91円台半ばから90円台半ばへ下落してスタートした後、15日にかけて一時92.43円の高値をつけた。その後15日の豪ドル急落を受けて91円丁度近辺へ反落するがすぐに反発し、16日には92円台を回復して推移している。

来週予想レンジ:対米ドル0.720~0.750ドル、対円90.0~93.0円
豪ドル/米ドルは、鉄鉱石価格の下げ止まりや豪失業率の上昇一服は豪ドル下支え材料となっているが、米ドル高傾向が強まる中でNZドルやカナダドルなど他のコモディティ通貨につれ安となり易い自愛となっている。こうした中、今週は23日早朝に結果が出るNZ準銀(RBNZ)金融政策決定で、既に幅広く予想されている25bpsの追加利下げだけでなく、先行きの追加利下げも示唆すれば、連れ安となって下落基調が強まりそうだ。豪ドル/米ドルは既に年初来安値の更新が続いているが、節目となる0.70ドルまで明確なサポート不在の中で、0.72ドル方向へ下落しそうだ。
なお、市場ではRBNZが今年10-12月期に向けて現在3.25%の政策金利が2.75%程度へ更に引き下げられるとの見方がコンセンサスとなっており、一部に2.50%への利下げを予想する向きもある。 22日発表の豪2QCPIについては、総合が前期の+1.3%から+1.7%へ大幅上昇予想となっているが、RBAが重視しているコアインフレ率(刈り込み平均と加重中央値の平均)は+2.3%で前期から横這いかつRBAのインフレ目標レンジ(+2.0~3.0%)に収まる見込みであることから、市場予想との乖離次第で上下に振れる可能性はあるものの、目先のRBA金融政策には大きな影響がなさそうだ。

【4.その他通貨】

ポンドは、6月以降BoE高官のタカ派発言が相次ぐ中で、22日発表の7月MPC議事要旨で既に利上げ票が投じられていたことが明らかになれば続伸しそうだ。特にユーロ/ポンドは0.6962ポンドと年初来安値(ポンド高値)を更新し2007年以来の水準となっており、テクニカル的にも下落し易い(英金融政策およびポンド見通しについては7月16日付投資戦略テーマ「GBP:大西洋よりドーバー海峡」を参照)。

南アランドは、23日の南ア準銀(SARB)の金融政策委員会直前となる22日発表の南ア6月CPIが上振れする場合には、利上げはないにしてもSARBのタカ派化リスクが意識され上昇圧力となる。SARBについて市場では、今回は政策金利が5.75%で据え置きが予想されているが、年内に6.0%超へ1回以上引き上げられると見る向きが多く、その鍵となるのがCPIだ。

(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)

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