今週の特徴:ドル反発だがレンジ内
今週は、対円および対ユーロで、前週のドル調整が一服・反転し、再びドル高基調となったが、ドル/円は124円台半ばで上値を抑えられ、ユーロ/ドルも直近安値である1.08ドル丁度近辺が下支えとなるなど、明確な方向性はいまだ見られないのが特徴だった。他方、豪ドル/米ドルは中国株安やコモディティ安で下落基調が継続しているが、今週は概ね横這い傾向にとどまった。
来週の見通し:歴史は繰り返すか?
来週は7日発表の米雇用統計が最大の注目で、雇用者数の増加ペース加速や平均時給の伸びの再加速がみられれば、ドルが続伸し、ドル/円は125円乗せ、ユーロ/ドルは1.08ドル割れトライの展開となりそうだ。但しドル/円の場合、ちょうど1ヶ月前の雇用統計発表後にも好結果を受けたドル上昇が、黒田総裁の円安牽制発言を招いたことから、ドル上昇後の警戒感は強く、利食いも入りそうだ。豪ドルは、米ドル高とコモディティ下落が続けば、年初来安値更新が続き0.72ドル割れトライとなりそうだ。
【1.ドル/円】
今週レンジ:123.01~124.58円 (想定レンジ内)
(前週時点の予想:123.0~125.00円)
ドル/円は、週初27日は中国株価の8.5%安を受けてリスク回避傾向が高まり米利回りが低下したことから下落、123.01円の安値をつけた。その後中国株価が翌日に下落が一服するとドル/円は反発に向かい、米FOMCおよび米2QGDPに向けてドル買いが続き、30日には一時124.58円の高値をつけた。米FOMCでは声明分で景気認識の上方修正などから次回9月利上げの可能性が更に高まったとの見方が広がったほか、米2QGDPでは成長率こそ若干市場予想を下回ったものの2%台を回復し、かつ前期のマイナス成長がプラスに上方修正されたこともドル下支え要因となった。但し31日には、ドル利食いが優勢となる中で本邦コアCPIが市場予想を若干上回ったこともあり、124円を割り込んでいる。
来週予想レンジ:123.0~125.5円
来週のドル/円の焦点は7日の米雇用統計だ。月間20~25万人増の雇用増加ペースが確認され(前月+22.0万人、市場予想+22.3万人)、失業率の低下傾向も続き(前月5.3%)、かつ前月低下した平均時給の伸びが再び高まれば(前月は前年比+2.0%)、125円を超えて丁度前月の米雇用統計発表日である6月5日につけた年初来高値が視野に入る(125.86円)。
但し、前月まさに良好な結果となった米雇用統計を受けてドル/円が急上昇した3営業日後(6月10日)に、現水準と近い124円台半ばで黒田総裁が円安牽制発言を行った記憶がよみがえり易く、実際に本邦政府・日銀から急激な円安進行に対して牽制発言が出てくる可能性がある。このため、米雇用統計に向けては上昇しやすいが、発表後には仮に良好な結果となってもドル利食いが優勢となり易そうだ。
8月7日金曜には日銀決定会合と黒田総裁定例記者会見が予定されており、米雇用統計に向けて一方向のドル高円安が進行する場合には、黒田総裁記者会見前には円安牽制への警戒感からドル利食いが持ち込まれる可能性もある。
【2.ユーロ】
今週レンジ:1.0893~1.1129ドル、135.54-137.10円 (対ドルでレンジを小幅上抜け)
(前週時点の予想:対米ドル1.0850~1.110ドル、対円135.0~137.5円)
ユーロ/ドルは、週初に中国株価の大幅下落を受けて米利回りが大きく低下すると、ドル安に押し上げられ1.1129ドルの高値をつけた。もっとも、その後は米FOMCがややタカ派化したとの見方や米2QGDPの好調な結果を受けてドルが反発基調となり、30日にかけて1.0893ドルへ下落した。
ユーロ/円もユーロ/ドルと同様の動きとなり、週初は中国株安を受けたユーロ高から、136円丁度近辺から137.10円へ上昇した。もっとも、米FOMC後のユーロ安が円安よりも大きかったことから再び136円丁度近辺へ反落、更に米2QGDP結果を受けたユーロ安で135.54円へ下落した。
来週予想レンジ:対米ドル1.0800~1.1150ドル、対円134.5~137.0円
来週はユーロ圏関連材料が殆どないことから、ユーロ/ドルはドル関連材料に左右される面が強くなりそうだ。米雇用統計が良好な結果となり、9月利上げ開始期待が高まり米利回りが上昇に向かえば、ユーロ/ドルは直近安値である1.0809ドル(7月20日)下抜けを試す展開となりそうだ。
【3.豪ドル】
今週レンジ:対米ドル0.7255~0.7351ドル、対円89.34~90.90円 (下値はほぼ想定通り)
(前週時点の予想:対米ドル0.7250~0.7450ドル、対円89.5~91.5円)
豪ドル/米ドルは週初の中国株安の影響を殆ど受けず、むしろ翌28日の中国株価やコモディティ価格の反発には反応し、29日早朝にかけて0.7351ドルへ上昇した。その後は米ドル反発基調を受けて反落し30日に0.7255ドルの安値をつけ年初来安値を小幅に更新したが、31日にかけては0.73ドル丁度近辺へ持ち直しており、結局0.73ドル丁度を挟んだもみ合いの展開だった。
豪ドル/円は、27日の中国株価大幅下落、28日寄り付きの続落を受けて28日に89.34円の安値をつけ年初来安値(7月9日の89.16円)に迫ったが、その後の中国株価反発を受けて91円手前まで反発した。但し週後半は概ね90.40-80円で方向感のないもみ合いとなった。
来週予想レンジ:対米ドル0.7150~0.7400ドル、対円89.0~91.5円
豪ドル/米ドルは、月初週で4日のRBA理事会と6日の豪雇用統計をはじめとして豪州関連材料が多いほか、米ISMや米雇用統計などの米国の主要統計結果からくる米ドル動向の影響も受けそうだ。全体として、コモディティ価格安からくる豪州の貿易収支悪化リスク、RBAの利下げあるいはハト派化の可能性および良好な米雇用統計への期待から、0.72ドル割れを目指す展開となりそうだ。
なお、豪雇用統計に関しては失業率が注目だが、足許低下傾向となっているため市場予想のように6.0%から6.1%へ多少上昇しても豪ドルへの影響はあまり大きくないかもしれない。
(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)
※次回の更新は8月14日(金)の予定です。
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