今週の特徴:弱い米雇用統計でリスクオン
今週は、先週末の米雇用統計が市場予想を下回り、米利上げ開始が遅れるとの見方が広がり、株式市場、原油などコモディティ価格や新興国市場が安堵感から大きく上昇し、ドルがほぼ全面安となったのが特徴的だった。特に豪ドルは、RBAが目先の利下げの可能性を示唆しなかったこともあって、3%超の上昇となっており、テクニカル的には下落トレンド反転のサインが出つつある。この間、ドル/円やユーロ/ドルはややドル安バイアスながらも、目先は日米欧の金融政策が据え置かれる可能性が高まったこともあって、各々概ね119-121円、1.11-1.13ドルで方向感のないレンジ相場が続いた。日銀は一部の期待に反して追加緩和を見送ったが、次回10月30日会合での追加緩和期待が根強く、円買いの動きは限定的に留まった。
来週の見通し:ダウン・アンダーがアップ・オーバー?[1]
来週は、米経済指標(14日の小売売上高、15日のコアCPIなど)および中国経済指標(13日の輸出入統計、14日のCPIなど)が注目されるが、目先は日米欧の金融政策変更が予想されない中で、ドル/円やユーロ/ドルは方向感のないレンジ相場が継続しそうだ。他方、豪ドルは、中国輸出入統計の更なる減少は下押しリスクの一方、15日の豪雇用統計で失業率が上昇しないことが確認されたり、コモディティ価格の反発が続くようだと、アジア通貨や新興国通貨と共に一段高の可能性がある。なお、英国では13日のCPI、14日の週平均賃金と重要指標が発表される週で、BoEは米国より先に利上げに踏み切らないとみられ当面は市場の経済指標への感応度が低下するが、基調としてはCPIが原油安で低下方向の一方、賃金は上昇基調となっており、強弱材料が交錯しポンドは上下しそうだ。
[1]ダウンアンダー(down under)は豪州の俗称。
1.ドル/円
来週のドル/円は、引き続き119-121円の方向感のないレンジが続きそうだ。来週は米経済指標(14日の小売売上高、15日のコアCPIなど)が発表予定となっており、いずれも市場予想を大きく上回る結果となれば、俄かに10月FOMCでの利上げ開始期待が高まり121円方向へ強含みとなる可能性はある。但し今週の動きを踏まえると、米利上げ期待の高まりは株安・リスクオフに繋がる可能性があり、その場合にはドル/円の上値が抑制されることになるかもしれない。なお、中国景気減速懸念との関連では13日の中国輸出入統計や14日のCPI発表があり、特に中国の輸出入が予想以上に鈍化すると、コモディティ価格が再び下落に転じたり、リスクオフの円高圧力となる可能性もある。
2.ユーロ
ユーロ/ドルも、1.12ドル丁度を挟んだ方向感のないレンジが続きそうだ。材料面では、米経済指標(14日の小売売上高、15日のコアCPIなど)の上振れがユーロ/ドルの下押し要因となる一方、中国経済指標(13日の輸出入統計、14日のCPIなど)の下振れは、以前ほどではないが避難通貨的なユーロ買いに繋がる可能性がある。なお、ユーロ圏関連ではドイツZEW期待指数の発表があり(13日)、悪化が続いているものの、最近は市場の反応が限定的となっている。
3.豪ドル
豪ドル/米ドルは、今週は弱い米雇用統計を受けたリスクオン相場の中で原油などコモディティ価格やアジア通貨などと共に予想外に大幅反発をみせた。来週も、世界景気減速懸念は完全に払拭された訳ではなく燻り続けようが、15日の豪雇用統計で失業率が上昇しないことが確認されたり、コモディティ価格の反発が続くようだと。アジア通貨や新興国通貨と共に一段高の可能性がある。他方、中国輸出入統計の更なる減少や、米経済指標(14日の小売売上高、15日のコアCPIなど)の上振れも豪ドルの上値抑制要因となるが、豪ドルの下落トレンド再開には力不足とみられる。なお、豪ドル/米ドルおよび豪ドル/円は8月末以降、ダブルボトムを形成しつつあり、日次一目均衡表の雲の上限(各々0.7319ドル、88.45円程度)を上抜けすると下落トレンド反転が示唆され、テクニカル的に一段高となる可能性が高まる。
(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)
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