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大槻 奈那

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フランス大統領選挙の予想と"リスクシナリオ":カギ握る投票率

4月23日日曜日、いよいよフランス大統領選の第一回目の投票が行われる。極右のルペン氏の勢いに衰えが見えたことから、そろそろ不透明要因も収束かと思われたが、ここにきて新たな波乱要因が出てきた。

直近の調査によれば、極左勢力のメランション氏が急速に支持を伸ばしている(図表1)。他の調査では、妻の給与問題に揺れるフィヨン氏を上回る勢いである。

しかし、こうしたメランション氏支持の動きについて、DeepMacro社は、"これまでの勢いは認めるが、既に遅きに失した"と分析する。

同社のデータは、ツイッターなどのソーシャル・メディアのデータを選挙予想に組み入れることに特徴がある。

こうしたSNSのポジティブ・コメントの数でも、先週前半までメランション氏は躍進していた。それでも、先週末、DeepMacro社は、同じ左派のハモン氏からの支持シフトのピークも過ぎたことから、「メランション氏には、既に最有力候補の二人に追いつくまでの勢いはない」と分析していた。そして実際、この週末以降、SNSのコメントにおけるメランション氏への熱狂は急速に冷めてきたようだ(図表2)。

一方、注目のルペン氏は、先週、自己紹介ビデオをツイートし人気を博した。ルペン氏が猫や赤ちゃんの写真を暖かく見つめる一方、颯爽とヨットを操るという、好感度アップを狙ったものだった。これを期に一旦ポジティブ・コメントも急増したものの、その勢いは続かなかった(図表2)。

ではこのまま、第1回目の投票では中道の前経済相マクロン氏と極右のルペン氏、決戦投票ではマクロン氏の勝利、というメインシナリオ通りになるのだろうか。

これについて、DeepMacro社は、もう一つの懸念材料を挙げる。左派のソーシャル・メディアでの発言動向である。選挙に関して左派系の発信があまり活発でないことから、選挙当日も、左派の投票率が低く、決選投票ではさらに下がる可能性があるとしている。左派の投票率が低ければ、右派のルペン氏に追い風となる。

実際、今回のフランス大統領選挙は、どの候補にも短所が目立つ。フィヨン氏は妻への給与に関わる問題を抱え、マクロン氏はまだ自分の党を設立して1年しか経っていない。経済相の実績はあるが、その前は政治的に無名の存在だった。かといってルペン氏とメランション氏の意見は極端過ぎる。

もともとフランスは選挙の投票率が高いお国柄で、前回の大統領選挙の投票率は第一回、決選投票ともに80%前後にも上った。ところが今回は、候補者の不人気などから「約3分の1の有権者が投票に行かないかもしれない」と一部のメディアが報じている。

仮に投票率が非常に低くなった場合、"万人受け"しない候補でも、一部の強固な支持基盤があれば勝てる可能性が出てくる。まして、DeepMacro社が言うように、左派の選挙への関心が薄いとすれば、ルペン氏には意外な追い風が吹くかもしれない。

ひとまず、第一回目の投票で、マクロン氏とルペン氏が決選投票に進めば、一歩メインシナリオに近づく。投票時間は、日本の24日月曜日午前3時まで。その直後から開票が始まり、同時に開票速報が公表され始める。その後日本の株式市場が開くまでにほぼ確定するが、第一報時点がよほどの接戦でない限り、当初の順位通りで確定する。

先週の北朝鮮の式典に続き、2週連続で政治イベントから目が話せない週末となりそうだ。

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