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チーフ・ストラテジスト広木隆によるグローバル・マクロ解説をお届けします。

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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

2017年11月米国雇用統計プレビュー

DeepMacro は11月の民間部門のNFPを約27万人増と予測している。「これはエコノミストのコンセンサス(執筆時点で20万人増)を大きく上回る」としている。

その通りであれば、ポジティブ・サプライズになるだろう。ここ最近、NFPは市場のイベントになってこなかった。極端に上下に振れた数字が出たがハリケーンの影響による異常値であり、サプライズにならなかった。今回はハリケーンの影響も薄れ正常な統計に戻る。今回のNFPで大きく上振れた数字が出れば市場は素直に反応するだろう。特に12月に入ってからは、ISMの景況感指数は製造業、非製造業ともに予想を超える悪化となり、ADP雇用統計は予想通りの19万人増とサプライズなし。こうした状況のあとでNFPが大きく伸びればサプライズになると思う。

このところきつい調整が続いてきたハイテク株の下げも一服感が出ており、相場底入れのきっかけとなるか期待したい。

但し、12月のFEDの利上げは織り込み済みだから、金利と為替が大きく動くとは思わない。動きの激しい株式については材料になると思う。

なお、DeepMacroのNFPトレーディング戦略では、金利の売り、米ドルの買い、S&P500の売りを推奨している。「金利の売り」というのは無論、金利上昇を見込んで「債券の売り」がより正確な表現だろう。「S&P500の売り」というのは直感に反するが、金利上昇が株価のバリュエーションや景気・企業業績にマイナスと捉えているのだろうと思う。ここは僕の予想と異なる点である。


(以下、DeepMacroの見解)

11月の雇用統計(NFP)は市場予想を上回る見込み - トレーディング戦略は金利の売り、米ドルの買い


・11月の民間部門の雇用者数は、市場予想の中央値(20万人増)を上回り、27万人増となると予測


・米国企業の雇用活動に関するビッグデータによると、11月は引き続き好調な月だった。新規求人数の伸びは低下したが、新規採用数の伸びは加速した。さらに、米国のDeepMacro「成長ファクター」も強かった。

・今回のDeepMacro予測はエコノミストのコンセンサスを上回っている。したがって、われわれのNFPトレーディング戦略では、金利の売り、米ドルの買い、S&P500の売り、となる。


雇用に関するわれわれの主要なデータソースは、3万社に及ぶ米国企業の人事ウェブサイトに掲載される求人情報である。企業が求人広告をウェブサイトに掲載した時点でわれわれはそれを新規の「求人」とカウントし、掲載が取り下げされた時点で求人が「埋まった」=「採用」された、と判断している。新たな求人は企業側の労働需要の増加を意味し、雇用の伸びの先行指標となる。また、これら新規求人データの総数は、DeepMacro「成長ファクター」によって計測される景気サイクルの全般的な強さなど他の変数と合わせて分析することで、毎月のNFPに対する説明力を持つことがわかってきている。


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われわれは11月の民間部門のNFPを約27万人増と予測している。これはエコノミストのコンセンサス(執筆時点で20万人増)を大きく上回る。この予測が正しければ、直近3ヶ月の平均は17.9万人増となり、労働市場のスラック(需給の緩み)をさらに吸収するのに十分な数字となる。


この「予測」は複数のファクターによって示された結果である。


新規求人数(と新規採用数)は引き続き好調だ。Figure1は米国の3万社のサンプル企業の人事ウェブサイトをスクレイピングして得た新規求人件数と新規採用件数の推移を示している。グリーンの網掛け部分がおおよそ11月のNFPレポートの調査対象期間となる。10月の前月比増加率は、9月のハリケーン被害による落ち込みからの回復を反映して、非常に高い水準となった。11月の増加率は10月からは低下したが、懸念材料となるようなものではない。前年比ベースで新規求人数は堅調に推移しており、新規採用数も同様である。


DeepMacro「成長ファクター」は11月に大きく上昇した。米国の景気サイクルは11月の間も、すでに十分に高いレベルからさらに改善した。これは雇用にとって良い兆候である。


NFPトレーディング戦略:金利の売り、米ドルの買い


ここ数ヶ月で、われわれはDeepMacro予測に基づいたシンプルなトレーディング戦略を発表してきた。DeepMacro予測がブルームバーグ調査のエコノミスト予測中央値を上回った場合は、金利の売り、米ドルの買い、S&P500の売り、下回った場合はその逆(金利の買い、米ドルの売り、S&P500の買い)を行う、という戦略である。


今月、DeepMacro予測はコンセンサス予想を大きく上回っている。したがって、われわれの戦略のルールに従えば、金利の売り、米ドルの買い、ということになる。そしてさらに、S&P500の売り、だ。なぜか?一方で、強い労働市場は、強い経済成長と強い利益成長に等しい。しかし他方で、強い成長は、金利上昇、利益に対する割引率の上昇を意味する。ここ数年は、FEDが力強い経済成長に直面して徐々に利上げの姿勢を強めていくにつれて、この金利の影響の方が大きくなっているとわれわれは見ている。


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この戦略は、発表されてからの2ヶ月間、各月でプラスのリターンを達成している。(ただし、ほんのわずかではあるが)Figure2は「バックテスト」の期間の結果と直近2ヶ月の結果を示したグラフである。投資対象の資産は最適化されたものではない。むしろ単純に、流動性の高いユーロドル金利先物と、G10数カ国と米ドルの通貨ペア(金利にセンシティブなドル/円、比較的センシティブでないドル/ユーロ)と、新興国通貨ペアの代表としてドル/メキシコペソを選んでいる。もしわれわれの戦略に予測能力があるとすれば、こういった「ベーシックな」資産に対して有効なはず、という考えからだ。


単純な戦略であるにもかかわらず、ヒット比率(プラスのリターンとなった割合)は約70%で、着実にリターンを積み上げている。明らかに、対象とする資産の選択については改善が可能だ。特に、2017年に入って当戦略のパフォーマンスを軟調にしているのは、主にドル/メキシコペソの要因だ。今年に関しては、DeepMacro予測は基本的にマーケットのコンセンサスを上回っていたため、当戦略ではメキシコペソに対し米ドルをロングしてきた。しかし、1月中旬以降、メキシコペソは、トランプによって引き起こされたパニックから回復し、上昇している。DeepMacro予測などといった単一のファクターに基づいて、米ドル/メキシコペソといった通貨ペアを取引する人はいないだろう。しかしながら、当戦略が全体としてプラスのリターンをもたらしていることは、われわれが利用しているデータソースには予測能力があり、したがって、DeepMacro「予測」が、NFPというイベントに関連してポジションを取る、またはリスクを管理するために活用可能であることを示唆しているのである。

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