今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
着実に復調しつつある米国経済
先週の米国株式市場
―欧米長期金利の上昇が重しとなり米国株は続落―
<先週の概況>
先週の米国株式市場はダウ平均が週間で161ドル安となるなど、主要3指数揃って続落しました。週前半は堅調に推移しましたが、米国やドイツの長期金利が大きく上昇したこと、また雇用統計の結果が市場予想を上回り利上げの早期化が意識されたことから週後半にかけて売られました。
ダウ平均は5月7日以来約1ヶ月ぶりに節目の1万8000ドルを割り込みました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中上昇は6銘柄にとどまりました。金利上昇を受け、JPモルガン(JPM)とゴールドマン・サックス(GS)の金融2社は揃って2%を超える上昇となりました。
<下落>
インテル(INTC)は同業のアルテラ(ALTR)の前週に買収が報じられ、大きく上昇していたところに正式発表による材料出尽くし感や証券会社の投資判断引き下げが行なわれたことで大きく売られ、週間で7.6%の下落となりました。通信大手のベライゾン(VZ)も投資判断引の引き下げが行なわれて週間で4.5%の下落となりました。
先週発表された主な経済指標
ISM製造業景況感指数 5月 52.8 市場予想 52.0 前月 51.5
6月1日に発表されたISM製造業景況感指数は、52.8と前月の51.5から改善し、市場予想を上回りました。
昨年12月から今年3月まで4ヵ月連続で悪化し、4月は横ばいでしたが5月分でようやく改善に転じた格好となりました。指数のヘッドラインを構成する内訳を見ても好内容で、「新規受注」・「生産」・「在庫」・「雇用」・「入荷遅延」のうち5月は「生産」を除く4項目が揃って前月から改善、中でも「新規受注」が53.5→55.8と2.3ポイント、「雇用」が48.3→51.7で3.4ポイントと前月から大きな改善を見せました。
今後発表される主な経済指標
5月 小売売上高(自動車・ガソリン除く、前月比) 市場予想 +0.5% 前月 +0.2%
11日に5月の小売売上高が発表されます。市場予想では変動の大きい自動車・ガソリンを除く売上高は前月比+0.5%増と堅調な内容になると予想されています。
同指数は1月・2月と悪天候の影響等から2ヵ月連続で売上高が前月比マイナスと冬場に落ち込みを見せましたが、足下では底打ちの兆しが見られます。5月分が市場予想程度かそれを上回れば米経済の落ち込みは一時的であり、今後力強さを取り戻すという期待が高まりそうです。
マーケットビュー
―着実に復調しつつある米国経済―
先週のマーケットビューでは良好な経済指標が発表されれば利上げの早期化が意識され株が売られやすくなると記しました。ISM製造業指数、新車販売台数、雇用統計の非農業部門雇用者数などが市場予想を上回って前月から改善し、利上げの早期化が意識され株が売られるというほぼ想定通りの展開となりました。
最近の当レポートでお伝えしている通り、直近発表されている4月分・5月分の経済指標は改善傾向を示すものが多く見られます。現在は経済指標が良好であれば利上げが意識されて株が売られやすい状況下にありますが、4-6月期以降の復活しつつある米国経済を背景に企業収益の回復が加速すれば、年初以降冴えない米国株の出遅れ感が意識され、資金が向かう時が来るでしょう。現在は夏以降に訪れる株価上昇局面の"仕込み時"ではないかと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕