今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
今週はなんといってもFOMCに注目
先週の米国株式市場
―ダウ平均値ごろ感などから4週ぶりに小幅反発―
<先週の概況>
先週の米国株式市場はダウ平均が4週ぶりに反発した一方ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は3週続落とまちまちでした。10日にはダウ平均が1万8000ドルを割り込み200日移動平均線に接近したことによる値ごろ感や、ギリシャの債務問題の進展やドル安による企業収益改善期待から大きく反発しました。また、11日に発表された5月の小売売上高が市場予想を上回ったことで個人消費回復期待が高まりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中17銘柄が上昇、13銘柄が下落しました。ナイキ(NKE)は米プロバスケットボール協会(NBA)と8年間の公式スポンサー契約を結んだと発表したことで買われました。また、依然として長期金利が上昇基調となったことでゴールドマン・サックス(GS)とJPモルガン(JPM)の金融2社はそれぞれ堅調でした。
<下落>
シェブロン(CVX)およびエクソン・モービル(XOM)はWTI原油価格が1バレル60ドルを割り込むなど上値が重く推移したことでそれぞれ下落しました。
先週発表された主な経済指標
小売売上高(自動車・ガソリン除く、前月比) 5月 +0.7% 市場予想 +0.5% 前月 +0.2%
11日に発表された5月の小売売上高は、変動の大きい自動車とガソリンを除いた売上高が前月比+0.7%と市場予想(+0.5%)を上回って前月から伸びが加速しました。
同指数は冬場に2ヵ月連続で前月比減少となり、4月分の戻りも鈍かったことから個人消費の鈍化が長期化するのではないかと一部で懸念されていました。ただ、5月分の売上高が高い伸びを見せたことで個人消費の鈍化は寒波などの特殊要因によるものであった可能性が高まりました。4-6月期、また7-9月期以降の米国経済回復加速に期待が持てる好内容と言えます。
今後発表される主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
16日から17日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。まずは利上げの有無に注目が集まりますが、5月に公開された3月分のFOMC議事要旨で多くのFOMC参加者が「6月利上げを決定できるデータが揃っていない」との認識を示していたことから、今回のFOMCで利上げが決定される可能性は極めて低いと考えられます。ただ、イエレンFRB議長は5月下旬に年内の利上げ開始に意欲を示し、ダドリーNY連銀総裁やウィリアムズSF連銀総裁など今年のFOMCで投票権を持つ主流派たちも5月末から6月にかけてほぼ同様の趣旨の発言を行っています。このため、FOMC終了後に発表されるFOMCメンバーの金利予想である通称「ドットチャート」で示される今年や来年の予想金利レンジをもとに、利上げ開始時期や利上げペースについての思惑が高まりそうです。
マーケットビュー
―今週はなんといってもFOMCに注目―
先週のマーケットビューでは、良好な経済指標が発表されれば利上げが意識され株が売られやすい環境下にあるものの、米国経済の回復は今後の企業収益改善につながることから長期的な視野で見れば株の買いどきではないかと記しました。結果的には小売売上高やミシガン大学消費者信頼感指数が市場予想を上回って前月から改善するなど良好な経済指標が発表されましたが、やはり株価の上値は重く推移しました。
今週の注目はなんといってもFOMCでしょう。経済指標欄でも記したように今回のFOMCで利上げが決定される可能性は極めて低いと思われますが、重要なのはFOMC終了後に示されるメンバーたちの今後の金利見通しである通称「ドットチャート」です。3月のFOMC終了後にはメンバーの2015年末の金利見通しの中央値について、12月のFOMC時の1.125%から0.625%まで低下していたことで「FOMCは利上げを急がない」とのメッセージが市場に伝わり、ダウ平均は発表後に300ドル以上上昇しました。
今回もドットチャートで2015年、16年、17年の金利状況にどのような見通しが示されるかによって、株価および為替レートに大きな変動が起きる可能性があり注意が必要です。
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