今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
揉み合い継続か
先週の米国株式市場
―ナスダック指数が4週ぶりに反発し史上最高値を更新―
<先週の概況>
先週の米国株式市場は、ダウ平均、S&P500、ナスダック総合指数の主要3指数が揃って上昇し、ナスダック総合指数は史上最高値を更新しました。
ダウ平均が1万8000ドルを割り込み値ごろ感が出たことに加えて、連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの今後のフェデラルファンド金利予測の中央値が、2016年・2017年について3月時点の発表よりも低下したことで、利上げペースがゆっくりとなることが意識され、買い先行となりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中20銘柄が上昇、1銘柄が横ばい、9銘柄が値下がりしました。シスコシステムズ(CSCO)は、数年に渡り中国事業に100億ドルを投資すると発表し、今後の収益拡大期待から買われました。また、ロシアの航空会社から74億ドル相当の貨物機を受注したと発表したボーイング(BA)も1.6%高と堅調でした。
<下落>
業績見通しを下方修正し、あわせてヘリコプター事業の分離・売却を検討していることを発表したユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)は週間で2.3%の下落となりました。
先週発表された主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
16日から17日にかけて行なわれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場予想通りフェデラルファンド金利の引き上げ(=利上げ)の決定は行なわれませんでした。
また、FOMC参加メンバーたちの今後の経済成長や金利予想をまとめた通称「ドットチャート」における金利予想の中央値が、2015年末は0.625%と3月時点から変化がなく、2016年末の中央値が1.875%→1.625%へ、2017年末が3.125%→2.875%へそれぞれ低下した(グラフ参照)ことで「今後の利上げペースがゆっくりとなる」との思惑が高まり、マーケットは発表後に債券高(金利低下)・ドル安・株高という反応を見せました。
今後発表される主な経済指標
5月 中古住宅販売件数(年率換算) 市場予想 528万件 前月 504万件
22日に5月の中古住宅販売件数が発表されます。4月分は前月から販売件数が減少し、市場予想も下回ってネガティブ・サプライズとなりました。
販売件数から見ると住宅市場の回復はやや鈍くなっていますが、先に発表された住宅市場の先行指標である6月のNAHB住宅市場指数は59と高水準を記録しており、今後は住宅市場の回復ペースが加速することが期待されています。
マーケットビュー
―揉み合い継続か―
先週のマーケットビューでは、FOMCの発表内容次第でマーケットの動向が大きく変わる見込みであることをお伝えいたしました。結果的には経済指標欄でも記したように参加メンバーたちの金利予想の中央値が前回発表時から低下したことで、利上げペースがゆっくりとなるとの思惑が働き、株価は発表後に上昇しました。一方でイエレンFRB議長は記者会見で、「参加メンバーの大半が年内に利上げが開始できると考えている」と述べ、改めて年内の利上げ開始意欲を示しました。マーケットでは9月のFOMCにおいて利上げが開始されるとの見方が最も有力なようです。ただ、イエレン議長が繰り返し強調している通り、利上げの決定は経済指標次第であることから、これから夏場に発表される経済指標の良し悪しに注目が高まります。
今週はギリシャの債務問題の動向に注目が集まりますが、それ以外にはやや材料難と言った状況で、引き続きダウ平均は1万8000ドルを挟んだ揉み合いが続くと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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