今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
FOMC次第だが、概ね順調に推移する決算から依然強気
先週の米国株式市場
―冴えない企業決算を嫌気して大幅反落―
<先週の概況>
先週の米国株式市場で、ダウ平均はアップル(AAPL)、ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)、IBM(IBM)などの決算発表が失望を誘い、週間で500ドル超の大幅反落となりました。
先週発表された中古住宅販売件数や新規失業保険申請件数といった経済指標は市場予想を上回る好内容だったものの、個別企業の決算への反応が大きく出た格好となりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中上昇は5銘柄にとどまりました。クレジットカードのビザ(V)は4-6月期の営業利益が前年比12%増と堅調で、市場予想を上回ったことから週間で5.5%の上昇となりました。保険大手のトラベラーズ(TRV)も営業利益が前年同期比19.8%増と堅調だったことで買われました。
<下落>
ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)は4-6月期の売上高が前年同期比5%の減収で、当期利益も減益となったことが嫌気され10%超の大幅安となっています。
先週発表された主な経済指標
中古住宅販売件数(年率換算) 6月 549万件 市場予想 540万件 前月 532万件
6月の中古住宅販売件数は年率換算549万件と市場予想を上回って前月から改善しました。2007年2月以来約8年半ぶりの高水準で、米国の住宅市場の回復を示す好内容となりました。
一方、6月の新築住宅販売件数は年率換算48.2万件と市場予想を大きく下回って、前月から販売件数が減少しました。新築住宅の落ち込みはやや気になるところですが、概して見れば米住宅市場の回復トレンドは継続しており、ポジティブな状況と言えそうです。
今後発表される主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
28日から29日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。利上げ開始は早くても9月のFOMCというのが市場のコンセンサスであり、FRB関係者もそれを否定していないことから、今回のFOMCで利上げが行われる可能性は極めて低いと考えられます。
今回のFOMCの注目ポイントは、9月の利上げ開始に向け、何らかのシグナルが送られるかどうかということになります。委員会の終了後に公表される声明文で、景気判断や労働市場の現状認識が6月のFOMCから引き上げられるか、また金融政策の現状維持に反対するメンバーが出るか、などが利上げ開始へのシグナルとして考えられます。
マーケットビュー
―FOMC次第だが、概ね順調に推移する決算から依然強気―
先週のマーケットビューでは、経済指標や企業決算の上振れを根拠に、米国株に強気な見方をお示ししました。結果としては一部大型株の決算内容が冴えなかったことに引きずられて米国株は大幅安となり、ダウ平均は株価下落時のサポートとなりやすい200日移動平均線を割り込んでいます。
今週はFOMCの声明発表が最大の注目点です。9月の利上げを示唆するような文言が盛り込まれた場合には米国株の上値が一層重くなる可能性がありますが、筆者は引き続き米国株に対して強気な見方を変えていません。
その理由は企業決算が順調に推移していることです。アップルやユナイテッド・テクノロジーズなど一部大企業の株価が決算発表後に急落したために、米国企業の決算が冴えないような印象がありますが、24日時点のトムソン・ロイターの集計によればS&P500採用銘柄の純利益は、前年同期比0.7%の減益と17日時点の1.7%減益から上方修正されました。このまま決算発表が進めば、当初減益と見られていた4-6月期の決算が増益に転じる可能性も出てきました。
ダウ平均が1万7500ドルを割り込んでいる足下の状況は売られ過ぎであり、1万8000ドルの回復に向け株価は反発するとみています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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