今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
4-6月期の米国企業は増益予想に転換
先週の米国株式市場
―FOMC声明に明確な9月利上げシグナルなく上昇―
<先週の概況>
先週の米国市場は、ダウ平均が週間で121ドル高と反発しました。ダウ平均は27日まで5日続落と冴えない値動きが続きましたが、1万7500ドルの節目を割り込んだことで値ごろ感が出て28日に反発し、29日に発表されたFOMC後の声明に明確に9月利上げを示唆するような文言が盛り込まれなかったことが好感されて、続伸しました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中上昇は23銘柄が上昇しました。2015年通期の業績見通しを引き上げたファイザー(PFE)とメルク(MRK)はそれぞれ大きく買われました。
<下落>
シェブロン(CVX)とエクソン・モービル(XOM)は原油価格の下落と減収減益の決算発表を受け売られました。プロクター・アンド・ギャンブル(PG)は四半期決算で純利益が前年同期から80%減少したほか、通期の業績見通しも慎重と受け止められ売りが嵩みました。
先週発表された主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
28日から29日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)が行なわれ、大方の予想通り政策金利の引き上げ(利上げ)の決定は行なわれませんでした。また、経済認識については大きなサプライズはなく、その他にも明確な9月の利上げ開始を示すシグナルのようなものは発せられませんでした。ただ、利上げを行う際に整うべき条件ついて、前回6月のFOMCでは、「労働市場の改善がさらに見られた際に(when it has seen further improvement in the labor market)」だったのが、今月のFOMCでは「労働市場の改善がさらにいくぶん見られた際に(when it has seen some further improvement in the labor market)」という表現に修正されました。
素直に解釈すれば、「もう少しだけ労働市場の改善が見られれば」ということで、FOMCが利上げに向けてのハードルを引き下げたと考えられます。市場ではこれをもって、9月利上げの可能性が高まったと見る向きが有力なようです。次回のFOMCは9月16日から17日にかけて開催され、それまでに発表される労働市場関連の経済指標は、(1)7月・8月分の雇用統計、(2)毎週発表される新規失業保険申請件数、(3)6月・7月分のJOLT求人労働異動調査などとなります。当然(1)の雇用統計の注目度が最も高いもの、(2)(3)も普段以上に注目度が高まるとみられ、相場変動要因として意識される可能性がありそうです。
今後発表される主な経済指標
雇用統計
7日に7月分の雇用統計が発表されます。上述したようにFOMCは利上げの条件として、もういくぶんの労働市場の改善をあげています。7月分・8月分の雇用統計が最大の判断材料となる可能性は高く、いっそう注目されます。
非農業部門雇用者数は前月差22.5万人増、失業率は前月から横ばいの5.3%、平均時給は前年比2.3%の上昇とそれぞれ堅調な内容になると予測されています。
マーケットビュー
―4-6月期の米国企業は増益予想に転換―
先週のマーケットビューでは、FOMCの声明内容次第ではあるものの引き続き米国株への強気な見方を維持しているとお伝えいたしました。結果的にダウ平均は上昇したものの、いまだに1万8000ドルの節目を下回っています。
今週はISM景況感指数や新車販売台数、雇用統計など重要な経済指標の発表が相次ぎます。好内容となれば9月利上げ開始が意識され、売りが出やすくなる可能性もありますが、本来論から言えば米国経済の好転は企業収益を増加させるポジティブな要因です。もし好内容の指標を受けて売られる局面となれば、長期的な視点で買い向かうというのが有力な選択肢であると考えています。
そして、毎週ご紹介しているトムソン・ロイター社集計のS&P500採用企業の決算集計で、ついに4-6月期の米国企業決算が前年同期比で増益予想に転じました。このままいけばS&P500の10業種分類で、エネルギーセクターを除くすべての業種で増益となる可能性も残されています。引き続き米国株には強気な見方を維持しています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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