今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
アク抜けせずしばらくはレンジ相場継続か
今週の米国株式市場
―FOMCでの利上げ先送りを見込んだ買いが優勢に―
<今週の概況>
(今週はシルバーウィーク前にレポートを発行する関係で木曜日の取引までのデータとなります。)
今週の米国株式市場は、17日に開催されたFOMC前に利上げが見送られるだろうとの思惑が高まり、買い優勢となりました。
FOMCでは利上げが見送られましたが、イエレンFRB議長が10月利上げの可能性に含みを残したことなどから、FOMCの声明発表後にダウ平均は下落に転じて取引を終えました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中、24銘柄が上昇しました。原油価格の反発を受けシェブロン(CVX)やエクソン・モービル(XOM)が買われました。証券会社の目標株価の引き上げを受け、ナイキ(NKE)も3%を超える上昇となりました。
<下落>
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は2016年の利益が今年と横ばいにとどまるとの予想を発表したことを受け、下落率トップとなりました。
今週発表された主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
16日から17日にかけて行われた連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ開始は見送られました。理由は、中国をはじめとした新興国の景気減速懸念、また足下のマーケットの混乱が米国の実体経済やインフレ率に与える影響を懸念したことのようです。FOMCの声明文で、これまでにはなかった以下の一文が追加されました。「Recent global economic and financial developments may restrain economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term.」(最近のグローバル経済や金融の動向が経済活動をいくらか抑制するかもしれず、短期的にインフレ率に低下圧力を与える可能性がある。)さらに、次の表現も前回の声明から付け加えられました。「but is monitoring developments abroad.」(海外動向を注視している。)
ただ、イエレン議長は、引き続き多くのFOMC参加者が年内の利上げを見込んでいることを明らかにしており、世界経済に大きな変調が見られなければ、12月までには利上げが行われる可能性が高いとみられます。
今後発表される主な経済指標
8月 中古住宅販売件数 市場予想 550万件 前月 559万件
21日に8月の中国住宅販売件数が発表されます。米国の住宅市場は堅調に回復していますが、イエレンFRB議長はFOMC後の記者会見で回復ペースが物足りないとの意向を示しました。
また、住宅セクターは米国経済全体に占める割合は小さく、経済を牽引する個人消費の補佐役的な役割であるものの、今後住宅市場がさらに上向いてくるとの見通しを示しました。中国住宅販売件数からその傾向が見られるか注目されます。
マーケットビュー
―アク抜けせずしばらくはレンジ相場継続か―
予想していたとおり、9月利上げは行われませんでした。ただ、イエレン議長は引き続き年内利上げに意欲を示しており、10月利上げの可能性も残したことから、マーケットには不透明感が残っています。さらに、今回利上げを行わなかった理由が、海外経済が米国経済に与える悪影響の見極めにあることから、海外経済がどの程度回復すれば利上げするのかということがわからず、利上げのタイミングを予想するのが一層難しくなりました。
以上のように利上げをめぐる不透明感が残り、アク抜けとはならなかったことから、米国株が大幅下落前の水準まで一気に回復するというシナリオは描きづらくなりました。しばらくは1万6500ドル前後の揉み合いが継続すると見ています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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