今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
ISM製造業指数の発表に注目
先週の米国株式市場
―薬代規制可能性を受けバイオ株が大幅下落―
<先週の概況>
先週の米国株式市場はダウ平均が69ドル安と小幅に下落しました。一方ナスダック総合指数は、次期大統領選の民主党の有力候補であるクリントン議員が薬代の引き下げについての規制案を発表したことを受けバイオ株の下げがきつく、週間で3%近い大幅下落となりました。米国市場は週初は反発して始まったものの、中国PMIの下振れやフォルクスワーゲンの排ガス試験の不正問題によりセンチメントが悪化し、週後半にかけて軟調に推移しました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中16銘柄が上昇しました。上昇率トップとなったナイキ(NKE)は6-8月期の純利益が市場予想を大きく上回ったことで買われ大幅上昇となりました。また、コカ・コーラ(KO)は外資系金融機関の買い推奨を受け堅調でした。
<下落>
下落率ワーストとなったキャタピラー(CAT)は今期の売上高見通しの下方修正と人員削減を発表したことで、今後の業績悪化が改めて意識され週間で10%近い大幅下落となりました。クリントン議員の薬代規制発言を受け、ユナイテッドヘルス(UNH)やメルク(MRK)、ファイザー(PFE)などヘルスケアや製薬各社が大きく売られました。
先週発表された主な経済指標
中古住宅販売件数 8月 531万件 市場予想 550万件 前月 558万件(下方修正)
8月の中古住宅販売件数は年率換算531万件と前月から4.8%の減少となり、市場予想も下回りました。
減少したとはいえ今年5月の販売件数とほぼ同水準で、新築住宅販売件数などその他の住宅関連指標は概ね堅調に推移していることから、現時点で住宅市場に大きな変化があったとは考えにくいとみられます。
今後発表される主な経済指標
9月 非農業部門雇用者数(前月差) 市場予想 +20.2万人 前月 +17.3万人
9月 失業率 市場予想 5.1% 前月 5.1%
9月 平均時給(前年同月比) 市場予想 +2.4% 前月 +2.2%
10月2日に9月分の雇用統計が発表されます。9月の雇用統計は10月27日、28日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されるかの大きな判断材料になるとみられ、注目されます。
労働市場の改善トレンドに変化はなく、非農業部門雇用者数や失業率は堅調な内容になるとみられます。労働市場の引き締まりを示し、将来のインフレ圧力となる平均時給が高い伸びとなるかどうかも注目されます。
マーケットビュー
―ISM製造業指数の発表に注目―
先週のマーケットビューでは、FOMCで利上げが見送られた理由が世界経済の減速懸念という今後の不透明感を高めるものだったことから、株式市場はしばらく揉み合いが続き、ダウ平均は1万6500ドル前後の推移が続くのではないかと記しました。ダウ平均は週間で約70ドル安と概ね想定通りの結果となりました。
今週発表される経済指標の中で特に注目されるのは雇用統計と10月1日に発表されるISM製造業景況指数です。先月のISM製造業指数は、ヘッドラインが51.1と2013年5月以来の水準まで低下し、構成要素である「新規受注」や「生産」が大きく低下しました。また、「輸出」も46.5と改善と悪化の境目となる50を下回り、2012年7月以来3年ぶりの低水準でした。これらの指標悪化が、中国をはじめとする新興国の景気減速からきており、10月も同様の傾向が継続すると、いよいよ世界経済の鈍化が意識され、株式市場は一段の調整を強いられる可能性があるとみています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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