今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
不透明感残りレンジ相場継続
先週の米国株式市場
―早期利上げ観測後退で上昇―
<先週の概況>
先週の米国市場はダウ平均が週間で157ドル高と上昇しました。週初は中国の景気減速懸念が強まったことなどから大きく下落して始まった米国市場ですが、週の半ばにかけて反発しました。また、2日に発表された雇用統計が低調で、10月のFOMCでの利上げ可能性が大きく低下したことが好感され、ダウ平均は200ドルの上昇となり週間ベースで上昇に転じました。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も上昇したものの、上昇率は小幅にとどまりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中21銘柄が上昇しました。原油価格の反発を受けシェブロン(CVX)やエクソン・モービル(XOM)が大きく上昇しました。ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)やマクドナルド(MCD)は投資判断引き上げを受けて買われています。
<下落>
アップル(AAPL)は新型iPhone用の部品の発注を今後減少させるのではとの報道が出て業績不安から下落しました。また、早期利上げ観測の後退を受け、ゴールドマン・サックス(GS)やJPモルガン(JPM)など金融株が軟調でした。
先週発表された主な経済指標
9月 非農業部門雇用者数(前月差) 市場予想 +20.2万人 前月 +17.3万人
失業率 市場予想 5.1% 前月 5.1%
平均時給(前年同月比) 市場予想 +2.4% 前月 +2.2%
米国雇用統計は全体として低調な内容でした。非農業部門雇用者数は9月分が前月差14.2万人増と市場予想を大きく下回ったことに加え、8月分と7月分が計5.9万人下方修正されました。注目度が高かった労働者の平均時給は前年比2.2%増と悪い結果ではないものの、市場予想の2.4%の伸びに及びませんでした。
将来のインフレ圧力となる同指標の伸びは高まっておらず、労働参加率も悪化傾向を続けていることから、FRBが利上げを急ぐ理由はなく、10月利上げの可能性は極めて低くなったと言えるでしょう。
今後発表される主な経済指標
FOMC議事要旨
8日に9月16日と17日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表されます。本議事要旨で公開されるFOMCが開催されたのは軟調だった9月の雇用統計の公表前ですが、その時点でどの程度利上げの可能性が議論されていたのか注目されます。
また、今週はサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁など複数のFRB関係者の発言が予定されており、低調だった雇用統計を受け、利上げについての発言に変化が出るか注目されます。
マーケットビュー
―不透明感残りレンジ相場継続―
雇用統計は低調な結果だったものの、依然としてFRBは12月利上げをメインシナリオとして考えているとみられます。もし12月に利上げが行われなかったとしても、早晩利上げが行われる状況に変わりはありません。9月のFOMCでは中国経済や世界経済の鈍化が米国の物価上昇率に下押し圧力となることが懸念されての、利上げ見送りでした。中国経済の鈍化の程度はいまだ不透明で、抜本的な改善には至っておらず、引き続き原油などのコモディティ価格も低調に推移しています。
これらの状況からしばらくは米国株が大きく上昇するシナリオは描きにくいといえます。来年以降に向けて中長期的には買える水準であるとの見方に変わりはありませんが、しばらくダウ平均は16,000~17,000ドルでの推移が続くのではないかと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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