今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
FOMCのトーン次第に
先週の米国株式市場
―原油価格上昇やECBのポジティブ・サプライズ受け4週続伸―
<先週の概況>
先週の米国株式市場は原油価格の上昇や10日に発表された欧州中央銀行(ECB)の追加金融緩和が市場予想を超える内容だったことが好感され、ダウ平均は200ドル超上昇して4週続伸となりました。
ECBの追加緩和発表当日の10日は、ドラギ総裁の今後の緩和に否定的な発言などを受け、ほぼ横ばいとなりましたが翌日に改めて緩和内容を評価する動きが広がりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中19銘柄が上昇しました。シェブロン(CVX)は原油価格の反発や投資判断の引き上げを受け週間で8%近い上昇となりました。また、ファイザー(PFE)は自社株買いのペースを速めると発表し買われました。
<下落>
ビザ(V)やプロクター・アンド・ギャンブル(PG)など11銘柄が下落しました。アップル(AAPL)は電子書籍の価格つり上げをめぐる問題で米最高裁が上告を棄却したことなどを受け下落しました。
先週発表された主な経済指標
ECB政策理事会
10日に開催されたECBの政策理事会では、市場予想を超える内容の追加金融緩和が発表されました。緩和内容の主な内容は以下3点です。
(1)月間資産購入金額の拡大(600億ユーロ→800億ユーロ)
(2)買い入れ対象債券に社債を追加
(3)長期資金供給オペ(TLTRO2)の拡大
予想を上回る緩和内容に発表当初はユーロ安・株高で反応しましたが、ドラギECB総裁が今後の追加金融緩和に否定的な発言をしたと受け止められ、一転ユーロ高・株安に転じました。ただ、発表翌日は改めて緩和内容を評価する動きが出て株高が進みました。
今後発表される主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
15日から16日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。今回の会合で利上げが決定される可能性はほぼなく、マーケットの注目は今後についてどのような示唆が行われるかに移っています。
年初からの世界的なマーケットの混乱が一服し市場が落ち着きを取り戻しつつあること、1-3月期のGDP成長率予想が堅調である(アトランタ連銀のGDPNowでは2.2%)ことなどを理由に6月にもFRBが再利上げに踏み切るのではないかとの声が徐々に高まっています。
今回の会合後には今後の金利やインフレ率、経済成長率などについてFOMCメンバーの今後の予想が発表されます。今後の米国経済について強気な見通しが示されれば、利上げペースが早まるとの予想につながり株が売られる可能性がありそうです。
マーケットビュー
―FOMCのトーン次第に―
先週のマーケットビューではECBの追加金融緩和がポジティブ・サプライズとなれば株高、ネガティブ・サプライズとなれば株安となる公算が大きいと記しましたが、ドラギ総裁の発言というネガティブ・サプライズはあったものの、緩和内容を評価する動きが広がり米国株は上昇しました。
ECBに続き今週は日銀の金融政策決定会合と連邦公開市場委員会(FOMC)が行われます。どちらも今回の会合では金融政策の現状維持が高いとみられていますが、今後の政策に対しどのような示唆が行われるか注目されます。
特に注目が高いのはFOMCでしょう。FRB高官は年初から米国経済に対して強気な見通しを示し、それが世界的な株安の原因の1つとなっているとの指摘がありました。実際に経済指標の下振れ等を受け、FRB高官たちのハト派的な態度が徐々に目立つようになると米国株は徐々に戻り基調を強めています。
筆者は足元のFRB高官たちの発言に鑑みると、株式市場のサポートとなるようなややハト派的な内容が示唆されるのではないかと考えています。もし今後の利上げペースが早まることが意識されるタカ派的な内容となれば、ダウ平均が4週連続の上昇後ということもあって、1万7000ドルを割り込む調整になる可能性が高いのではないかと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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