今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
短期的な過熱感あり
先週の米国株式市場
―利上げペース鈍化を好感しダウ平均は昨年末株価を回復―
<先週の概況>
先週の米国株式市場でダウ平均はすべての営業日で上昇し、株価は昨年末の終値を上回りました。連邦公開市場委員会(FOMC)後に示されたプロジェクションにおいて、FOMCメンバーの今年の利上げ回数予想が2回と昨年末から半減していたことで、今後の利上げペースが鈍化することが改めて意識されました。
なお、ダウ平均は21日月曜日も上昇し7日続伸を記録しています。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中26銘柄が上昇しました。一部の証券会社が1-3月期のiPhone販売が強含むと予想したことを受け、アップル(AAPL)が3%超上昇しました。WTI原油先物価格が40ドルを回復するなど原油価格上昇の流れを受けてシェブロン(CVX)やエクソンモービル(XOM)などがそれぞれ3%前後上昇しています。
<下落>
リスクオフが後退したことを受け、ファイザー(PFE)やメルク(MRK)、ウォルマート(WMT)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)のディフェンシブ4銘柄が売られました。
先週発表された主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
15日から16日にかけて開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では市場の予想通り利上げが見送られました。あわせて発表されたFOMCメンバーの2016年末のFF金利の見通しは、0.9%と昨年末の1.4%から低下し、利上げペースが鈍化することがはっきりと示されました。また、声明文において海外の経済や金融状況がリスク要因として挙げられるなどマーケットに対して配慮している姿勢も示されました。
FRBの姿勢変化が鮮明となったFOMCの結果を受けドルは全面安となり、米国株は上昇しました。弱い経済状況の中でFRBが利上げを断行するというリスクが後退したことに市場が安心感を強めたとみられます。
今後発表される主な経済指標
2月 新築住宅販売件数(年率換算) 市場予想 51.0万件 前月 49.4万件
23日に2月の新築住宅販売件数が発表されます。1月の販売件数は前月から鈍化したものの、米国住宅市場は緩やかな回復を継続しています。
市場予想では2月は1月から販売が加速するとみられています。
マーケットビュー
―短期的な過熱感あり―
先週のマーケットビューでは、FOMCの声明文がハト派的トーンなら株高、タカ派的トーンなら株安が見込まれると記しました。結果は経済指標欄でも記したようにハト派色の高い結果となったことから、ダウ平均は連日上昇を続けています。
米国経済が弱含むなかでの利上げ断行や原油価格の大幅下落など年初からの悪材料が徐々に解消する中、ダウ平均は足元まで7日続伸して昨年末の株価を回復と戻り基調を強めています。各地区連銀の発表している製造業指数も改善基調となっており、米国経済は徐々に好転の兆しを見せていることから、ひとまず今後の大幅な下落可能性はかなり低くなったとみています。
一方、短期的な株価調整には注意が必要です。筆者が独自に算出しているS&P500の騰落レシオは足元で170%近くまで上昇し、短期的な過熱感が出ています。いったんは1万7000ドル近辺までの株価調整に注意を払っておきたい局面です。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。