今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
FRB高官の発言に注目する週
先週の米国株式市場
―6月利上げが意識される中高安まちまち―
<先週の概況>
先週の米国株式市場でダウ平均は34ドル安と4週連続で下落した一方で、S&P500とナスダック総合指数は上昇と高安まちまちでした。中でもハイテク株比率の高いナスダック総合指数は1.1%超上昇し5週ぶりに反発しました。
原油価格上昇を受けて高く始まったダウ平均ですが、FRB高官の早期利上げに対する積極的な発言や、タカ派的だったFOMC議事要旨を受けて17日から19日まで3日続落となりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中上昇は11銘柄にとどまりました。決算が市場予想を上回ったウォルマート(WMT)が8%近い大幅高となりました。また、著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ(BRKB)が株式を購入したことが明らかとなったアップル(AAPL)も5%超上昇しています。
<下落>
マクドナルド(MCD)、コカ・コーラ(KO)、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)、ナイキ(NKE)など消費関連の一角が軟調でした。
先週発表された主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
18日に公表された4月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨は、市場を驚かせるタカ派的な内容でした。議事要旨では参加者の多くが、条件が整えば6月に追加利上げを実施することが適切となるとの見解を共有していたことが明らかとなりました。追加利上げを実施するための条件として、4-6月期の景気持ち直し、労働市場の回復継続、2%インフレ実現に向けた前進が挙げられています。
6月の利上げが確実視されるほどではありませんが、議事要旨の公表を受けこれまで市場が見込んでいたよりもFRBがタカ派的であることが明らかとなり、中長期金利の上昇や円安・ドル高が進みました。
今後発表される主な経済指標
イエレンFRB議長発言
27日にイエレンFRB議長がハーバード大学で講演を行います。今後の金融政策への言及があるかどうかは不明ですが、FOMC議事要旨で6月利上げの可能性が高まった後だけに発言内容に注目が集まります。
また、今週はイエレン議長以外にも23日にセントルイス連銀のブラード総裁、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、25日にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のカプラン総裁など多くのFRB関係者の発言が予定されています。
マーケットビュー
―FRB高官の発言に注目する週―
先週のマーケットビューでは、S&P500の予想PERが依然としてやや割高圏にあることから下方向に注意と記しました。結果、ダウ平均は小幅安だった一方ナスダック総合指数は上昇とまちまちでした。
FOMC議事要旨は「利上げは早くても秋以降だろう」というマーケットのコンセンサスを否定して6月利上げの可能性を残す驚きのタカ派的な内容でした。ただ、議事要旨では「景気持ち直し、労働市場の回復、インフレ加速といった条件が揃えば」との前提が置かれていることから、必ずしも6月利上げが確実な情勢ではありません。
そして今週は、多くのFRB関係者の発言が予定されています。マーケットが急速に早期利上げの可能性を織り込みにかかる中、FRB高官たちの発言に市場が一喜一憂するといった展開が予想されます。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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