今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
ISM製造業指数と雇用統計に注目
先週の米国株式市場
―経済指標の上振れを好感し大幅上昇―
<先週の概況>
先週の米国株式市場でダウ平均は週間で372ドル高と5週ぶりに反発しました。住宅関連や耐久財受注などの経済指標が予想を上回る好内容だったことから、米国経済への楽観論が高まりました。イエレンFRB議長をはじめとしたFRB高官の早期利上げへの積極的な発言を受けながらも堅調に上昇しています。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は、週間で3.4%の高い上昇率となりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中29銘柄が上昇しました。アップル(AAPL)、インテル(INTC)、IBM(IBM)、シスコシステムズ(CSCO)、マイクロソフト(MSFT)と上昇率上位にはハイテク株が並びました。また、イエレンFRB議長やその他FRB高官の利上げについての積極的な発言を受けゴールドマン・サックス(GS)とJPモルガン(JPM)の金融2社もそれぞれ3%高となりました。
<下落>
ダウ平均採用銘柄のうち下落したのはナイキ(NKE)のみでした。
先週発表された主な経済指標
イエレンFRB議長発言
27日に行われた講演で、イエレンFRB議長は「条件が揃えば数ヶ月以内の利上げが適切である」と発言し、早期の追加利上げに積極的な姿勢を示しました。一方で賃金の伸びの鈍さに触れるなど、急激なペースの利上げには慎重な姿勢を示しました。
先日発表された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、労働市場の回復継続・物価上昇ペースの加速・4-6月期の米国経済の回復の条件が揃えば6月のFOMCで利上げが実施される可能性があることが示されました。イエレンFRB議長の発言はその可能性を高めるもので、今週発表される雇用統計等への注目がさらに高まることになりました。
今後発表される主な経済指標
5月分雇用統計
非農業部門雇用者数(前月差) 市場予想 +16.0万人 前月 +16.0万人
平均時給(前年比) 市場予想 +2.5% 前月 +2.5%
6月3日に5月分の雇用統計が発表されます。前述したように6月のFOMCで利上げが行われるかどうかの判断材料に、「労働市場の回復継続」が挙げられていることから雇用統計は最も注目度の高い経済指標ということになるでしょう。
ただ、5月分の統計にはベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の従業員がストライキを行っていたことの影響が出るとみられており、非農業部門雇用者数の伸びはやや低調に終わる可能性もありそうです。
あわせて注目度の高い労働者の平均時給は前年比2.5%の増加と予想されています。
マーケットビュー
―ISM製造業指数と雇用統計に注目―
先週のマーケットビューではFRB高官たちの発言によって一喜一憂しそうと記しました。結果的には高官たちの早期利上げに積極的な発言を受けても株価は底堅く大幅上昇となりました。今週は1日のISM製造業指数や3日の雇用統計など重要な経済指標の発表が続きます。これらの指標が好調であれば6月利上げへの思惑が高まることになりそうです。
最近の米国株式市場は、早期利上げの可能性が高まっても株価が下がるようなことがあまりなく、徐々に利上げへの耐性が付きつつあるように見受けられます。その意味では好調な経済指標を受けても株価が大幅に調整することは考えにくいかもしれません。一方でS&P500の予想PERは17.9倍と、やや割高感のある水準に近づきつつあります。株価が大幅に上昇した後ということもあって、今週は下方向への調整を警戒しておくべきと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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