今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
米国株の調整に警戒
先週の米国株式市場
―米国市場高安まちまち 冴えない雇用統計受け金曜日は下落―
<先週の概況>
先週の米国株式市場はダウ平均が週間で66ドル安と下落した一方で、S&P500はほぼ横ばい、ナスダック総合指数は小幅高と主要3指数はまちまちでした。
休場明けの米国市場は雇用統計の発表を前に様子見姿勢が強まって、ダウ平均は連日二桁ドルの変動と大きな方向感が出ませんでした。ただ、3日に発表された雇用統計の非農業部門雇用者数がネガティブ・サプライズとなり、米国経済を巡る不透明感が強まったため3日は3指数揃って下落しました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中15銘柄が上昇、15銘柄が下落となりました。ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)はヘアケア製品を手がける企業を33億ドルで買収すると発表し今後の業績拡大期待から買われました。
<下落>
アップル(AAPL)は、ゴールドマン・サックス(GS)がスマートフォン市場全体の成長鈍化を背景にアップルの目標株価を引き下げたことが嫌気され週間で2%超下落しました。また、利上げ後退が意識され、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェース(JPM)が下げています。
先週発表された主な経済指標
非農業部門雇用者数(前月差) 5月 +3.8万人 市場予想 +16.0万人 前月 +12.3万人
平均時給(前年比) 5月 +2.5% 市場予想 +2.5% 前月 +2.5%
3日に発表された雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月からわずか3.8万人増と2010年9月に5.2万人減を記録して以来の低い伸びにとどまりました。また、4月分が+16.0万人から+12.3万人、3月分が+20.8万人から+18.6万人へと計5.9万人下方修正されました。ネガティブ・サプライズとなり、早期利上げ期待は大幅に後退しました。
今後発表される主な経済指標
イエレン議長講演
6日にイエレンFRB議長の講演が予定されています。先日の講演ではイエレン議長は「今後数ヶ月以内の利上げが適切になる」と発言しました。ネガティブ・サプライズとなった雇用統計を受けその発言に変化がみられるか注目されます。
マーケットビュー
―米国株の調整に警戒―
雇用統計は、非農業部門雇用者数が目を疑うようなネガティブ・サプライズとなりました。前年比2.5%の上昇となった平均時給など、悪い指標ばかりというわけではありませんが、全体として冴えない内容だったと言えます。また、雇用統計と同日に発表されたISM非製造業指数も市場予想を下回って前月から大幅に悪化し、2014年2月以来2年3ヶ月ぶりの低い水準となりました。先に発表されたISM製造業指数もヘッドラインは改善したものの、内容を見れば決して良いものではなく、米国経済は成長加速といった状況にはありません。
一方、以前から記している通りS&P500の予想PERは18倍近くと、高値圏にあります。米国経済の成長加速が描けるシナリオならばともかくそうではない状況下ではこのPERは割高であると考えます。ここからの米国株の一段の上昇にはやや懐疑的で、6月はFOMC・日銀の金融政策決定会合・英国の国民投票とリスクイベントが多いことから、現在は米国株のウェイトをあえて高める局面ではないと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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