今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
英国国民投票の結果次第
先週の米国株式市場
―Brexit懸念から軟調―
<先週の概況>
先週の米国株式市場は主要3指標が揃って下落しました。英国のEU離脱を問う国民投票(Brexit問題)を前に、世論調査で離脱派の優勢が伝えられたことからリスクを回避する動きが強まりました。残留派の国会議員が殺害される事件が起き、同情票が残留派に流れるなどの思惑から16日には主要3指数が反発しましたが、週末には再び売られました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中上昇はベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)やゼネラル・エレクトリック(GE)などの5銘柄にとどまりました。
<下落>
アメリカン・エキスプレス(AXP)とビザ(V)のクレジットカード2社が売られたほか、iPhone6などに対し北京市内での販売停止命令が出されたことでアップル(AAPL)も大きく下げました。また、リンクトイン(LNKD)の買収を発表したマイクロソフト(MSFT)も財務負担を懸念する売りが出て2.6%安となりました。
先週発表された主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
4日から15日にかけて行われた連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げは見送られました。5月分の雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが低調だったことなどから今回の会合で利上げが見送られることは予想されており、サプライズはなかった格好です。今回の声明文では、声明文序盤のFOMCメンバーの経済状況の認識についていくつか前回の声明文から変更された箇所がありました。特に特徴的だったのが、「労働市場は鈍化した」と明確に労働市場の現状認識が下方修正されたことです。
また、3月・6月・9月・12月のFOMC後に発表されるメンバーの経済予測にも大きな変化がありました。2017年以降のFF金利見通しの中央値が、2017年(1.9%→1.6%)、2018年(3.0%→2.4%)、より長期(3.3%→3.0%)とそれぞれ大きく下方修正されました。また、通称「ドットチャート」と呼ばれるFOMCメンバーそれぞれの今後のFF金利予測のチャートにも顕著な変化がありました。3月時点では、今年の利上げ回数を「1回だけ」と予想している「0.5%~0.75%」のレンジが1人だけだったのに対し、今回は6人に増えたのです。これらを総合すると、FOMCメンバーたちは前回会合からかなりハト派寄りに変化したと考えてよさそうです。
今後発表される主な経済指標
6月23日 英国国民投票
今週の注目材料はなんといっても英国のEU離脱を問う国民投票(Brexit問題)です。一時は離脱派の優勢が伝えられ、それが市場のリスクオフを誘い米欧日とそれぞれ株価が下落しました。その後残留派として活動していたジョー・コックス議員が殺害される事件が起き、世論が残留に傾くとの見方からややリスクオフからの巻き戻しが起きています。
残留・離脱どちらの結果になるかは予断を許しません。国民投票の結果は日本時間24日のお昼前後から大引けの時間帯にかけて判明する見込みです。
マーケットビュー
―英国国民投票の結果次第―
先週のマーケットビューでは、経済指標の鈍化・予想PERの高止まり・Brexitへの警戒の3点を理由に米国株の調整に警戒と記しました。結果的に米国市場はほぼ想定通りの値動きとなり、ダウ平均は週間で200ドル近く下落しました。
今週はなんといっても英国国民投票の結果が米国株の動向を左右しそうです。週の前半は残留派優位の報道を受けて買い戻しが予想される一方で、投票直前には再びリスクオフの様相が強まる可能性もありそうです。また、もし離脱となればショック安が予想され、残留となればリスクオフからの巻き戻しで大幅なリスク資産上昇の可能性がありそうです。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。