今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
再びやや割高感ある水準に
先週の米国株式市場
―英国のEU離脱の悪影響への懸念が後退し大幅反発―
<先週の概況>
先週の米国株式市場は、主要3指数が揃って3%を超える大幅上昇となりました。週初こそ英国のEU離脱(Brexit)を巡る不安から下げて始まったものの、英中銀のカーニー総裁が金融緩和の実施を示唆したことや、実体経済への悪影響が大きくないとの観測が徐々に広がって米国株は買い戻されました。
ダウ平均は国民投票後の2日間で約870ドル下落しましたが、その後4日続伸で810ドル近く上昇しほぼ下げを埋めた格好となっています。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均採用の30銘柄中28銘柄が上昇しました。ゼネラル・エレクトリック(GE)は米金融安定監視評議会が子会社の金融部門を資本規制の対象外にすると発表したことが好感され6%近い大幅上昇となりました。原油価格の反発が好感されてエクソン・モービル(XOM)も5%高となっています。
<下落>
デュポン(DD)およびビザ(V)の2銘柄が下落しました。ビザは、手数料率を巡る小売各社との訴訟で上告審が和解案を拒否したことが嫌気されました。
先週発表された主な経済指標
ISM製造業景況感指数 6月 53.2 市場予想 51.3 前月 51.3
7月1日に発表されたISM製造業景況感指数のヘッドラインは53.2と市場予想を上回って前月から改善しました。
ヘッドラインを構成する5項目は、新規受注(55.7→57)、生産(52.6→54.7)、雇用(49.2→50.4)、在庫(45→48.5)、入荷遅延(54.1→55.4)と揃って改善しました。米国製造業の景況感改善は言うまでもなく米国経済や米国株にとって非常にポジティブな材料です。
今後発表される主な経済指標
7月8日 6月分雇用統計
非農業部門雇用者数 市場予想 +17.5万人 前月 +3.8万人
平均時給(前年比) 市場予想 +2.7% 前月 +2.5%
7月8日に6月分の雇用統計が発表されます。5月分の雇用統計は全般にネガティブ・サプライズで今後の利上げ見通しを大きく後退させる結果でした。
6月分の結果がどのような内容であれ、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが実施される可能性は低いとみられますが、5月の落ち込みが一時的なブレなのか、それとも継続性があるのか注目されます。
マーケットビュー
―再びやや割高感ある水準に―
先週のマーケットビューでは、Brexitの短期的な影響を見極める展開になりそうと記しました。結果的に短期的な悪影響が限定的であるとの見方が広がり、米国株は大きく買い戻されました。
先週の大幅な反発でS&P500の予想PERは再び18倍台近くとやや割高感のある水準となりました。ISM製造業指数の上振れなど、企業業績の改善につながりそうなポジティブな材料もありますが、やや慎重姿勢で望む局面ではないかと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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