今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
利上げ見送りでも割安感はあまりない水準
先週の米国株式市場
―ダウ平均は小幅上昇 ナスダックはアップル牽引し大幅高―
<先週の概況>
先週の米国市場でダウ平均は週間で38ドル高と小幅に上昇しました。週初から早期利上げに否定的なFRB高官の発言を受け大幅高となったダウ平均ですが、原油価格の下落などから翌日は大幅安となりました。その後経済指標の下振れなどを受けて9月の利上げ観測が後退して15日には177ドルの大幅高となりました。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は時価総額の大きいアップル(AAPL)が大幅に上昇したことで2%を超える上昇となりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
新型iPhoneの予約が好調に推移しているとの報道を好感してアップル(AAPL)が週間で11%超の大幅高となりました。また、7-9月期の売上高見通しを引き上げたインテル(INTC)も6%超上昇しています。
<下落>
原油価格の下落を受けシェブロン(CVX)とエクソン・モービル(XOM)の2社が3%を超える下落となりました。また、経営幹部が航空機エンジンの出荷が見通しを下回ると示唆したと伝わったユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)も2.5%安となっています。
先週発表された主な経済指標
小売売上高(前月比) 8月 -0.3% 市場予想 -0.1% 前月 +0.1%
自動車・ガソリン除く(前月比) 8月 -0.1% 市場予想 +0.3% 前月 -0.1%
15日に発表された8月の小売売上高は、ヘッドラインが前月比0.3%の減少と市場予想を下回る低調な内容でした。変動の大きい自動車・ガソリンを除いた売上高も0.1%の減少と増加を予想していた市場予想に反して前月から減少しました。
自動車とガソリンを除いた売上高が2ヶ月連続で前月から減少したのは2012年以来のことであり、個人消費低迷がやや懸念されます。
今後発表される主な経済指標
連邦公開市場委員会(FOMC)
20日から21日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。利上げが実施されるかどうかが最大の焦点ですが、今回の会合では利上げは見送られるとの見方が有力です。
8月下旬にジャクソンホールで開催された講演でイエレンFRB議長は「この数ヶ月で追加利上げの論拠が強まった」という趣旨の発言をし、早期利上げに意欲を示しました。さらにフィッシャーFRB副議長は9月の利上げ実施および年内複数回の利上げの可能性はあるかとの問いに対し、「イエレン議長の発言はその可能性があることを示唆している」とタカ派的な発言を行いました。こうした発言を受け一時は9月の利上げ観測が高まりましたが、その後発表された雇用統計やISM景況感指数、小売売上高などの重要指標が軒並み市場予想を下回る軟調なものに終わったことに加え、ブレイナードFRB理事が「利上げは慎重に進めるべきだ」と発言するなど、FRB内に9月の利上げ実施に向けコンセンサスができていないことが明らかとなりました。これらからすると今月の会合では利上げは見送られると考えられます。
マーケットビュー
―利上げ見送りでも割安感はあまりない水準―
先週のマーケットビューでは小売売上高などの経済指標や、ブレイナードFRB理事の発言などに注目と記しました。小売売上高は市場予想を大幅に下回る低調な内容で、ブレイナード理事は利上げ先送りを示唆する発言を行ったことで9月の利上げ観測は大幅に後退しました。
今週はFOMCが最大の注目材料です。利上げは先送りされる可能性が高いとみられますが、サプライズで実施となった場合のショック安には注意が必要です。また、利上げ見送りとなった場合でもS&P500の予想PERは18倍台とあまり割安感はないことから買い上がるような局面ではないと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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