今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
相当に悪い指標が出なければ12月利上げへ
先週の米国株式市場
―早期利上げをめぐる思惑などから小幅反落―
<先週の概況>
先週の米国市場でダウ平均は67ドル安と小幅に反落しました。週初から相次いでFRB高官が早期利上げを主張したことなどから下げて始まったダウ平均は、ISM非製造業指数の改善が好感され反発する場面もありましたが、その後は値を戻せませんでした。ただ、週明け10日のダウ平均は88ドル高と反発しています。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
利上げによって利ざやが拡大すると期待され、ゴールドマン・サックス(GS)とJPモルガン(JPM)の金融2社が上昇率1位と2位になりました。また、デュポン(DD)やボーイング(BA)もしっかりでした。
<下落>
市場予想を下回る通期の業績見通しを発表したウォルマート・ストアーズ(WMT)が5%近く下落し下落率トップとなりました。アメリカン・エキスプレス(AXP)も投資判断引き下げが嫌気されて4%近く下げています。
先週発表された主な経済指標
ISM製造業景況感指数 9月 51.5 市場予想 50.4 前月 49.4
ISM非製造業景況感指数 9月 57.1 市場予想 53.0 前月 51.4
8月分で大きく悪化したISM製造業景況指数、ISM非製造業景況指数が、揃って9月分で大きく回復しました。まず、製造業指数のヘッドラインは49.4→51.5と市場予想を上回る改善を見せ50の節目を超えました。そして非製造業指数のヘッドラインは51.4→57.1と5.7ポイントの改善で、V字回復と言っても良い大幅改善となりました。
両指数の大幅改善を受け、年内の利上げ可能性がかなり高くなったと言えそうです。
今後発表される主な経済指標
9月 小売売上高(自動車・ガソリン除く、前月比) 市場予想 +0.3% 前月 -0.1%
14日に9月の小売売上高が発表されます。変動の大きい自動車とガソリンを除いた売上高は8月まで2ヶ月連続で前月比減少しており、個人消費低迷の兆しではないかとやや懸念されています。
市場予想では9月は3ヶ月ぶりに前月比プラスになると見込まれています。
マーケットビュー
―相当に悪い指標が出なければ12月利上げへ―
先週のマーケットビューではISM製造業景況指数、ISM非製造業景況指数に注目と記しました。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが見送られた大きな理由の1つとして、8月分の両指数が揃って大きく悪化したことがあるとみられます。9月分で両指数はそれぞれ大きく回復し、米経済の先行き不安は後退しました。
7日に発表された雇用統計は非農業部門雇用者数や失業率といった注目度の高い指標こそ市場予想に及ばなかったため、やや冴えない印象を与えますが、中身を細かくみていくと決して悪い内容ではありません。年内のFOMCは11月と12月の2回ですが、11月は約1週間後に大統領選を控えていることから利上げに踏み切って市場に混乱を与えるリスクを取ることは避けやすいとみられます。12月のFOMCまでに相当に悪い経済指標が出なければ、12月に利上げが実施される可能性はかなり高くなったと考えています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。