今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
今後焦点は政策実行力へ
先週の米国株式市場
―トランプ氏の経済政策への期待で大幅高―
<先週の概況>
先週の米国市場でダウ平均は959ドル高と史上最大の上げ幅となりました。週初からクリントン氏が大統領選を優位に進めていることが期待されて大きく上昇したダウ平均は、8日に実施された米大統領選で予想外にトランプ氏が勝利したものの、トランプ氏が掲げる経済政策が景気刺激的であることへの期待から9日以降連日でダウ平均は上昇しました。 S&P500やナスダック総合指数もそれぞれ大きく上昇しました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均を構成する30銘柄のうち26銘柄が上昇しました。中でもトランプ次期大統領の金融規制緩和への期待からゴールドマン・サックス(GS)、JPモルガン(JPM)の2社が週間で15%前後の大幅高となりました。また、インフラ投資が増えることへの期待感からキャタピラー(CAT)も13%高と大きく上げています。
<下落>
プロクター・アンド・ギャンブル(PG)、コカ・コーラ(KO)といったグローバルに消費財を展開する企業の一角が下げました。貿易摩擦への懸念もあるのかもしれません。
先週発表された主な経済指標
米大統領選
11月8日に実施された米大統領選は事前の予想を覆し、トランプ氏が勝利しました。世論調査ではクリントン氏の優勢が伝えられていただけに、大きなサプライズとなりました。開票速報が流れている時間帯に開いていた日本市場の株価は大きく下落しましたが、結局米国市場は大きく上昇しています。トランプ氏は減税や財政支出の拡大など景気刺激的な経済政策を掲げていたことから、それらの政策への期待が高まったとみられます。
今後発表される主な経済指標
11月 小売売上高(除く自動車・ガソリン、前月比) 市場予想 +0.3% 前月 +0.3%
15日に10月の小売売上高が発表されます。米国の個人消費は堅調を維持しており、10月分は前月比0.3%の増加が予想されています。
マーケットビュー
―今後焦点は政策実行力へ―
先週の米国市場はトランプ氏の経済政策への期待から大幅高となりました。マーケットビューではトランプ氏が勝利すれば一旦大幅安になるのではないかと記しましたが、大外れとなってしまいました。
現在のマーケットはトランプ氏の経済政策への期待が先行している形ですが、今後は徐々にその実効性に移っていくでしょう。彼が主張する政策をそのまま実行するためには、大幅な債務上限の引き上げが必要です。上院下院とも共和党が多数派になったとは言え、トランプ氏の共和党との調整力は未知数で、党内の財政再建派との交渉がうまくいくかどうかは不透明な状況です。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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