今週の注目ポイント (原則月曜日更新)
世界最大の市場で、世界経済に大きな影響を及ぼす米国のレポートを週刊でお届けします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
巨大ハイテク株の出遅れ顕著
先週の米国株式市場
―ダウ平均は小幅上昇で4週続伸もナスダックは大幅安に―
<先週の概況>
先週の米国市場はトランプ政権の財務長官にゴールドマン・サックス(GS)出身のムニューチン氏の起用が決定し、ドット・フランク法の一部撤廃などへの期待が高まり金融株が買われたことから、ダウ平均は小幅に上昇して4週続伸となりました。
一方でアップル(AAPL)が発注を減らしたと報じられ半導体関連が売られたことなどからハイテク株比率の高いナスダック総合指数は3%近い大幅安となりました。
米国株式市場バリュエーション
業種別リターン
ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
ダウ平均を構成する30銘柄のうち上昇は7銘柄にとどまりました。次期財務長官に起用されることになったムニューチン氏が金融規制法であるドット・フランク法の一部撤廃に言及したことを受け、ゴールドマン・サックス(GS)やJPモルガン(JPM)が大幅高となりました。
<下落>
クレジットカードのビザ(V)が5%を超える大幅安となったほか、インテル(INTC)やシスコシステムズ(CSCO)、マイクロソフト(MSFT)、IBM(IBM)といったハイテク関連株が売られました。
先週発表された主な経済指標
非農業部門雇用者数 11月 +17.8万人 市場予想 +18.0万人 前月 +16.1万人
失業率 11月 4.6% 市場予想 4.9% 前月 4.9%
2日に発表された米雇用統計はまずまず堅調な内容でした。11月の非農業部門雇用者数は市場予想の18万人増に対して17.8万人増とほぼ予想に一致する水準で過去分はネットで0.2万人下方修正されています(グラフ参照)。また、失業率は4.6%と前月の4.9%から0.3%の大幅改善となりました。11月分の雇用統計は満点というほどではなかったが、引き続き米労働市場が堅調に改善していることを示す内容だったと言え、12月のFOMCで利上げが実施される可能性はかなり高そうです。
今後発表される主な経済指標
11月 ISM非製造業景況感指数 市場予想 55.5 前月 54.8
5日に11月のISM非製造業指数が発表されます。先に発表された製造業指数は3ヶ月連続で改善しましたが、非製造業指数は8月分で大きく悪化したものの9月分で急回復、10月分は再び悪化とまちまちな状況が続いています。11月分は市場予想では小幅な改善が予想されています。
マーケットビュー
―巨大ハイテク株の出遅れ顕著―
先週の米国市場は、ダウ平均は小幅に高かったものの、ナスダック総合指数は3%近い大幅安となりました。先週のマーケットビューでは買い向かう局面ではないと記しましたが、概ね想定通りの値動きとなりました。
金融株が買われたことなどから大統領選後ダウ平均は連日のように史上最高値を更新しています。一方でここへきて一部巨大ハイテク株の出遅れが目立っています。グラフに示したのはダウ平均とナスダック総合指数の指数に加えて、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)といった時価総額の大きいハイテク株の株価推移をみたものです。大統領選前の11月8日の株価を100とするとダウ平均が5%近く上昇、ナスダック総合指数も選挙前より上昇していますが、その他のハイテク株は総じて選挙前の株価を下回っています。中でもアルファベット、フェイスブック、アマゾンは揃って5%超下落しています。
この3社のファンダメンタルズに大きなマイナスとなるニュースは特段見当たらず、ハイテク株からトランプ氏が掲げる経済政策で得をするとみられるオールドエコノミー株への資金シフトが起きていることが下落要因の1つとみられます。こうした銘柄たちの今後の成長に不安を感じていないのであれば、押し目と考えて安値を拾っていくという投資戦略も一考に値するかもしれません。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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