今週のマーケット展望

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、週の初めに今週のマーケットのポイントと見通し、予想レンジ等をお伝えします。

広木 隆が投資戦略の考え方となる礎を執筆しているコラム広木隆の「新潮流」はこちらでお読みいただけます。

広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

1万9000円台半ばを固める値動き 週末には雇用統計を控えて様子見もしくは利益確定売りに押される展開か ECB理事会後のドラギ総裁会見も要注目

3月FOMCでの利上げ観測が急速に高まり、114円台前半へ円安が進行したことを受けて、日経平均は先週、取引時間中に一時年初来高値を更新する場面もあった。TOPIXは終値でも年初来高値を更新した。今週は週末にメジャーSQと米国雇用統計というイベントを控えて、日経平均で1万9000円台半ばを固めることができるか注目される。

いったん上放れたように見える日本株だが上値の重さも意識された。3月期末に絡む国内機関投資家の決算対策売りに頭を抑えられた格好だ。しかし、早晩重石は軽くなる。期末要因は3月半ばには例年終了する。早ければメジャーSQ通過で需給は改善してくるかもしれない。

来週のFOMCでの利上げはほとんど織り込んだ。焦点は今後の利上げの回数だ。もともと年3回が前回ドットチャートの示唆だった。それがどう変わるか変わらないのか。それ次第でドル円が節目の115円を越えるか、あるいは再度材料待ちとなるかが分かれるだろう。Bloombergは、「イエレン議長が今年の利上げ回数について、予想よりも最終的に多くならざるを得ない可能性があると示唆した」と報じている。その根拠として、現行金融政策のスタンスの評価を微妙に修正し、「中程度に緩和的」と表現したことを指摘。同議長は1月19日のカリフォルニア州スタンフォードでの講演では 「やや緩和的」と評価していた。この微妙な変化が利上げペースの加速につながるというのだが、単なるニュアンスの問題ではないかと思う。

FOMCの前の鬼門として雇用統計がある。無難な結果なら問題はないが、万が一、下振れた場合、利上げ確実と織り込んだ市場のコンセンサスを揺さぶることになる。雇用統計前にポジションを落としたい投資家は多いだろう。週末の日本株相場は様子見で済めば上出来で、場合によっては利益確定売りで結構な押し目を入れるかもしれない。

相場材料としては、日本では8日に10-12月期GDP成長率(2次速報値)が発表される。1日に発表された2016年10-12月期法人企業統計季報では設備投資が2四半期ぶりに増加したことから、1次速報値から上方修正される可能性が高まった。好感して相場が上昇する可能性がある。

中国では5日から全人代が始まる。中国関連銘柄が動意づくか注目したい。ユーロ圏では9日に欧州中央銀行(ECB)政策理事会が開催される。現状維持がコンセンサスだが会合後のドラギ総裁の会見が注目される。なぜなら欧州連合(EU)統計局が2日発表した2月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比2.0%上昇し、2013年初め以来、4年ぶりの高水準となったからだ。2%をやや下回る水準というECBの中期目標も上回り、金融緩和の出口議論の素地が固まりつつある。フランスの大統領選レースではマクロン氏がルペン氏を抑える観測も浮上、ユーロの政治リスクが後退しつつある。場合によってユーロが買われ、ユーロ発の円安も、ユーロ発のドル安も両面あるので注意したい。

日経平均の予想レンジは1万9200~1万9700円としたい。下値は25日移動平均前後、上値は先週つけた年初来高値を若干上回る程度の水準か。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

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