今週のマーケット展望

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、週の初めに今週のマーケットのポイントと見通し、予想レンジ等をお伝えします。

広木 隆が投資戦略の考え方となる礎を執筆しているコラム広木隆の「新潮流」はこちらでお読みいただけます。

広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

トランプ発言に振り回される展開は次第に収束へ 日本企業決算、日欧首脳会談、米国GDPなどに注目

先週末のニューヨーク外国為替市場で円相場は大幅に3日続伸し、1ドル=111円45~55銭で取引を終えた。トランプ米大統領がドル高をけん制する発言をツイッターに投稿し、ドル売りを誘った。しかし、これは毎度のパターンで、「市場はいつまでトランプ氏の支離滅裂発言に付き合うのか」という点が早晩クローズアップされてくるだろう。つまり初めはトランプ氏の過激な発言に市場は動揺するのだが、やがて落ち着きを取り戻す。トランプ氏の発言は、勝手な思い付きでまったく支離滅裂だから、それを額面通りに受け取るほうが馬鹿を見る。

例えば、今回も、「中国やEUなどは通貨を操作し、金利を抑えている」というが、中国はそもそも人民元の変動を一定の範囲に制限する管理通貨制度を採用しているので、「通貨を操作している」というのは白日の下で従来ずっとおこなってきたことである。EUは金融政策として超緩和的な政策をとってきたがようやく出口に進もうとしている。トランプ氏に批判されるいわれはないし、的外れな批判だ。

市場はトランプ氏のこの発言をドル高けん制と受け止めたのだろうが、何度も言うように、いまのアメリカにドル高是正の手段はないし、保護主義で関税を課そうとしているなか、通貨安にしてしまったら、米国民はなにも買えずインフレが加速して困窮するだろう。それにもかかわらずFRBの利上げを好ましくないと批判するなど、滅茶苦茶な発言である。

よって市場はそのうちにトランプ発言を無視し、より経済のファンダメンタルズに沿った動きに回帰するだろう。ファンダメンタルズという点では27日発表の米国の4-6月期GDPの発表が注目だ。個人消費の堅調な増加等を要因として高い伸び率になると予想される。4%台の成長率が示されればドル買戻しの材料になるだろう。またもうひとつの焦点は25日に予定されているトランプ大統領とユンケル欧州委員長が通商問題について話す会合である。なんらかの妥協点が見えることを期待したい。

週初こそ円高を嫌って日本株も売り先行で始まりそうだが、2万2500円割れの水準では押し目買いも入るだろう。週央からは4‐6月期の決算発表が本格化してくる。序盤で発表されるファナック、日立建機(6305)などの中国関連銘柄の決算に対して市場がどのような反応を示すかがカギだ。慎重な見通しは織り込み済みと冷静な受け止め方ができれば相場の地合いが堅調になった証と判断できる。

今週のレンジは2万2300円から2万3000円としたい。

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