新潮流

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。

広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

【新潮流】第5回 夢の賞味期限

◆世界の金融市場で「利回り志向」が顕著である。米国債のみならずいろいろな債券の利回りが低下している。欧州債務危機の発端となったギリシャでさえ国債の発行を再開した。利回り志向のおカネが向かう先は債券だけではない。利回り商品である上場不動産投資信託(REIT)にも資金が流入、東証REIT指数は約1年ぶりの高値にある。株式市場でも高配当利回り株が買われている。

◆こうした利回り志向の高まりについて僕は「将来の成長よりも、確実なものを追う風潮」だとコメントした(日経新聞23日付け朝刊)。前回の小欄で取り上げた投資家のショートターミズム(短期志向)の一面と言える。前回はこうも述べた。「相場の世界でも夢を追いかける企業を待つのは難しくなっている」と。

◆そんな風潮をよそに東証で大躍進の成長銘柄がある。ミクシィである。売買代金トップとなる大商いで株価は連日急騰、ついに終値で1万円に乗せた。会社が示した今期の営業利益は100億円。前期の4億円強から大幅に増えるという。眉唾ものと思えなくもないこの見通しを補強する材料が出た。App Storeの売り上げランキングでミクシィの「モンスターストライク」が、ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」を抜いて1位になった。

◆ミクシィが第二のガンホーになるかもしれない - 投資家の夢が膨らんだ結果の大幅高か、と思いきや、実情は異なるようだ。ミクシィ株の平均保有時間は約5分。値動きのよさに着目した個人投資家は超短期売買を繰り返し、値ざやを抜くことに懸命になっている。やはりここでもショートターミズムがはびこっていると言ったら反論があるかもしれない。「いや、俺たちは夢を買っているんだ」と。そうかもしれない。だとしたら、しかし、夢の賞味期限が5分では悲しい。

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