新潮流

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。

広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

【新潮流】第12回 欲望という名の電車

◆先週金曜日の小欄の最後で、<株式相場という名のトラック>と書いた(【新潮流】第9回「恐怖の報酬」)。もちろんテネシー・ウィリアムズの名作戯曲『欲望という名の電車』を意識しての比喩である。

◆『欲望という名の電車』という芝居は、あらすじを伝えてもまったく面白くない。この劇が名作とされるのは、人間の「業」の凄まじさ、悲しさ、罪深さを苛酷なまでに徹底して描いているからだろう。それゆえ主人公ブランチは難役で、演じる俳優(女優)の力量が問われる作品である。米国ではヴィヴィアン・リー、日本では杉村春子など一流の女優が演じてきた。

◆主人公の人物造形は重層的かつ複雑である。時代的・地理的背景に加え属人的な性格破綻。要約してコラムで紹介するのが難しい。それに比べれば株式市場のほうがまだ素直で捉えやすい。そうは言っても足元の相場は「下値不安が薄らいで上昇した」とのひとことでは片づけられない様相となってきた。つい数週間前の相場は、まったく覇気が感じられなかった。それがこの変わりよう。ノンバンクや証券などの金融株や不動産、建設、新興市場のゲーム株などが物色されリスク選好の動きが鮮明となっている。日経平均は昨日、約2か月ぶりに1万5000円の大台を回復した。

◆劇はブランチの台詞で幕が開く。「<天国>へのアクセスポイント。あなたがどこにいようと構いません。今すぐその場から<欲望>という名の電車に乗りなさい。気がつけば<墓場>という名の電車に乗り換えていることでしょう」 欲望に駆られて再び走り始めた株式相場という名の電車。くれぐれも行先を間違えないようにしてもらいたい。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

【お知らせ】「メールマガジン新潮流」(ご登録は無料です。)

チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから

レポートをお読みになったご感想・ご意見をお聞かせください。

過去のレポート


マネックスレポート一覧

当社の口座開設・維持費は無料です。口座開設にあたっては、「契約締結前交付書面」で内容をよくご確認ください。
当社は、本書の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。本書の内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。