新潮流

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。

広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

【新潮流】第14回 伝え方

◆天邪鬼である。ひねくれものである。何に対しても反論したくなる性質(たち)である。特に、ベストセラーの書物についてはチャレンジしたくなる。自分の本が売れないからといって、妬(ねた)んでいるわけでは決してない。

◆例えば『伝え方が9割』。押しも押されもせぬ堂々のベストセラーだ。その一節に「同じことを伝えるにも、言い方次第で相手の受け取り方は違ってくる」 としてこんな事例が挙げられている。

「デートしてください」→「驚くほど旨いパスタどう?」「芝生に入らないで」→「芝生に入ると、農薬の匂いがつきます」・・・以下省略。

はっきり言ってケース・バイ・ケースではないか。ストレートに言ったほうがいい場合だってある。伝える相手次第だろう。

◆中国の個人向け金融商品でMMFにあたる通貨基金が急拡大しているというニュースが先日新聞に掲載された。インターネットで購入できる手軽さと利回りの高さが受け、4月末の残高は日本円に換算して約29兆円と昨年末から倍増したという。革新的な商品性で急成長したことを評価する論調である。記事には一言も「シャドーバンキング」とか「理財商品」との言葉はないが、実はこれ、立派なシャドーバンキングである。銀行を経由しない資金の流れを、そう定義するのであれば。

◆メディアがさんざん警鐘を鳴らしてきた中国のシャドーバンキング問題。「同じことを伝えるにも、言い方次第で相手の受け取り方は違ってくる」 いい例だ。「シャドーバンキング(影の銀行)」という言葉が不穏な雰囲気を感じさせるので、なんでもかんでも危ないもののように思われるが、そういうのは一部のファンドに限られる。まさに「伝え方が9割」だ。

◆それにしても「驚くほど旨いパスタどう?」という文句でデートしてくれる女性が果たしているのだろうか?試してみたが誰ひとりとしてつきあってくれない。ベストセラーに騙された。「カネ返せ!」→どんな言い方にすればいいだろう?

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

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