チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
【新潮流】第24回 夏至
◆株式相場の季節的アノマリーでもっともよく知られているのは「Sell in May (5月に売れ)」であろう。これには「秋に戻ってこい」という続きがある。株式市場のパフォーマンスを調べると、上半期(冬から春)が好調で、下半期(夏から秋)が不調であることがはっきりしている。だから相場が天井をつける春の終わり(すなわち5月)に売って、相場が底を打つ秋にまた市場に戻って来いというのだ。10月の終わりに市場に戻るのがもっとも効率がよいことから「ハロウィン効果」とも呼ばれている。
◆日本株の過去のパフォーマンスを調べると1-6月の上半期が良く、7-12月の下半期が悪いという明確な傾向が認められる。不思議なのは年度の上半期(4-9月)下半期(10-3月)ではなく、暦年のそれである点だ。上半期だけ株の運用をして、「あとの半年は寝て暮らす」のが良い - 「デカンショ節投資戦略」と名付けられた投資法を推奨する例もある[榊原(2011)]。
◆上半期のパフォーマンスが良く、下半期のパフォーマンスが悪いのはなぜだろう。これらの時期にぴたりと重なる事象は、昼夜の長さである。上半期は冬至から夏至へ昼の時間が長くなっていく。反対に下半期は夏至から冬至へと夜が長くなっていく。秋から冬にかけて不調をきたす季節性感情障害(SAD, seasonable affective disorder)という症状が知られているが、これには夜の長さが関係しているらしい。そして株式市場が下半期に不振となるのも夜の長さと関係したSADの影響ではないかという分析がある。
◆一方、夏はバカンスの季節、みんな海や山に出かけてしまう。株取引なんてやっている場合ではないから夏枯れでパフォーマンスが落ちるのだという説もある。明日は夏至である。明日を境に夜が長くなっていくが、本格的な夏はこれからだ。ここは夏らしく明るく、SAD説よりバカンス説を支持しようではないか。え?どっちにしろ下半期のパフォーマンスは悪いのではないかって?アノマリーなんて気にするのはやめましょうよ、だって夏なんだから!って今日のオチは強引過ぎるかな(汗)。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆