チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
【新潮流】第58回 立秋
◆うだるような猛暑日が連日続いているが、今日は立秋。暦のうえではもう秋が立つ。
秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる
秋が来たという証は、はっきりと目には見えないが、鳴る風の音にその気配を感じて驚いた - 古今和歌集に収められた藤原敏行の歌。ヒートアイランド化する都心では、この夏のさなか、とてもそんな風流を感じることはできない。
◆「さやか」とは、「はっきりと」という意味である。「さやかに見えないもの」に目を凝らし、その気配を耳で感じる。そんな五感を研ぎ澄ます努力が必要な段階になってきた。金融市場の危機につながりかねない予兆をいまから探っていこう。なぜならリーマンショックは100年に一度の危機と言われたが、危機はもっと頻繁に起きているからだ。僕が証券マンになって実際に経験したものに限っても、1987年ブラックマンデー、1997年アジア通貨危機、2007年サブプライム危機(パリバ・ショック)と10年周期で危機は訪れている。
◆そして余波がその後に続くのだ。87年ブラックマンデーのあとには日本株が89年末に大天井を打って翌年からバブル崩壊。97年アジア通貨危機に続いて98年ロシア国債デフォルト~LTCM破綻、2000年のITバブル崩壊。そして2007年サブプライム危機の直後2008年にリーマンショックだ。それからもうじき6年。この間、欧州債務危機などミニ「危機」はあったがいずれも大事に至らずにここまできた。「そろそろ何か起きても...?」と思うのがひとの心理だろう。
◆但し、そうやってみんなが「危ない」と言っているときに限って案外何も起きないものである。スキーと同じで、恐怖心・警戒心があるうちは腰が引けた状態だから転んでも大怪我にはならないのである。
◆バブルの予兆は「目にはさやかに見えねども」、こちらははっきりと優劣がつく。今日、JPX日経400指数構成銘柄の入れ替えが発表される。日本を代表する優良銘柄で構成される指数だ。シクリカル(周期的)な変動に左右されない長期投資の指標として、今後ますます普及していくことを期待したい。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆