チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
【新潮流】第173回 バレンタインデー
◆今日2月13日は2(に)1(い)3(さ)でNISAの日。証券会社的にはNISA(少額非課税投資制度)にちなんだ話題を書くべきなのだろう。しかし、僕にとってはもっと切迫した問題がある。
オレだけど 母さん助けて チョコがゼロ (メリーチョコレート「バレンタイン今どき川柳」入選作)
オレオレ詐欺に引っかけた川柳が笑えない。今年はバレンタインデーが土曜日である。仕事関係の義理チョコがもらえない。今年は本当に「チョコがゼロ」となってしまう。
◆バレンタインデーに女性からチョコレートを贈るという風習(?)をつくりだしたのは、日本のチョコレート業界である(バレンタイン川柳を主催しているメリーチョコレートもその立役者)。本来的なキリスト教の聖人ウァレンティヌス追悼には、もちろんチョコレートは関係ない。欧米の恋人たちもチョコレートを贈ったりはしない。日本独特の習慣である。チョコレートの年間消費量の約2割がこの日に集中するというから、もはや国民的行事になっている。
◆もともとは意中の相手にチョコを渡して愛の告白をする日としてプロモートされた日本流のバンレンタインデー。ところがチョコ配りが国民的行事になり義理チョコがあふれた結果、逆に「本命チョコ」なんていう言葉も生まれた。「本命」にしかチョコを渡さなかった時代には「本命」という言葉は不要だったから、「本命チョコ」という言葉もなかった。そう考えると義理(偽物)が大量に出回って本命(本物)のありがたみが一層増したとも言えるのかもしれない。その点は、「悪貨が良貨を駆逐する」ということに少し似ている。
◆ギリシャ問題でユーロがまた揺れている。本来、ヨーロッパには悪貨もあれば良貨もあったはずである。ところが今は統合された通貨「ユーロ」があるのみ。「悪貨が良貨を駆逐する」ではないが、このユーロという通貨の「悪貨」的な側面ばかり強調されて、「良貨」はなかなか表に顔を出さない。しかし、当然だが、ユーロには「良貨」の面もあるのである。なぜなら、良貨も悪貨もひとつにしたのがユーロなのだから。表向きには見えにくいからこそ、その「良貨」の価値は紛れもなく「本命」である。
チョコ選ぶ メモにかかない あとひとり (「バレンタイン今どき川柳」入選作)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆