チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
【新潮流】第204回 催花雨
◆小欄が春休みをいただいていた間に、東京の桜は満開を迎え、早くも花の盛りは過ぎた。昨日の雨が花散らしの雨となったところもあるだろう。天気予報によれ ば、向こう一週間は、気圧の谷や湿った気流の影響で曇りや雨の日が多いという。この時期に降り続く雨のことを「菜種梅雨(なたねづゆ)」と言う。菜の花の 雨、「菜花雨」と同じ読みで「催花雨(さいかう)」とも言う。この季節の雨は、菜の花をはじめ色々な花を催す(咲かせる)という意味である。
◆上で花散らしの雨と書いたが、桜の花は散るべき時期が来るまで散らない。風雨が強まると、まだ咲き切らない桜の花が、満開を待たずに散ってしまうのではな いかと心配になるけれど、そういうことはない。そのかわり、満開となったあとは、潔く散る。散るべき時期になれば自然に散る。花散らしの雨は、雨が花を散 らしているわけではない。自然に散り行く花を惜しんで空が泣いている様を言うのである。
◆一時は、日経平均2万円は時間の問題というような雰囲気もあった株式市場だが、年度替わりを境に雲行きが怪しくなってきた。しかし、それが相場のリズムで ありサイクルだったのだろう。桜ではないが2万円をつける時期というものが自ずと来る。それまでは、雨が降ろうと風が吹こうと、この上昇相場のトレンドが 途切れてしまうことはない。
◆また、望ましい調整ではないか。一本調子で上がり続ける相場というものはない。どこかで押し目があるものだ。然るべき調整があってはじめて息の長い相場が続いていく。今の相場は雨模様だが、ここで雨が降るから次の相場が大きく育つ。この雨が次の花を咲かせるのである。
◆僕の家の前には何百メートルも続く桜並木がある。見るとだいぶ葉桜になっているが、桜の根元に植えられたツツジがもういくつかほころんでいる。今頃の雨はやさしい。春雨だ、濡れていこうか。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆