チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
【新潮流】第217回 擬音語
◆昨日の小欄で取り上げた「夫婦の日」。4月22日は「良い夫婦の日」、11月22日は「いい夫婦の日」、毎月22日は「夫婦の日」と書いたら、「2月22日は猫の日です」というご指摘をいただいた。なるほど、2・2・2(にゃん・にゃん・にゃん)で猫の日か。うちにも猫がいるが、彼女は「にゃーにゃー」とは鳴かない。むしろ、英語の「Meow(ミャウ)」に近い鳴き声を出す。
◆英語で犬の鳴き声は「バウワウ」、鶏は「クックアドゥードュルドュー」。所変われば、動物の鳴き声も変わる。いや、動物の鳴き声が変わるわけではない。それを聴きとる人間の耳が違う。聴こえ方が違うのだ。もっと正確に言えば、聴きとった音を言葉にする表現方法が違うというべきか。物が発する音を言葉で模したものを「擬音語」という。
◆二週間ほど前の小欄で、「せりせりと薄氷杖のなすままに」という山口誓子の句を引いた。「せりせり」と音をたてて崩れてしまう春の薄い氷を「薄氷」と書いて「うすらい」と読む。その日、日経平均は一時2万円にワンタッチしたがその後調整局面に入った。小欄はこう述べた。<急な寒の戻りに気を付けよう。日経平均2万円は薄氷を踏んで立っていないか。よく聞き耳を立ててみよう。「せりせり」という音が聞こえたら、要注意である>。氷の鳴る擬音語は不気味である。ミシミシでもシャリシャリでも。今はどうか。当時聞こえた氷がきしむような音は僕の耳に届いていない。昨日、日経平均は終値で2万円を回復した。
◆人間以外のものを人間のように表すのを「擬人化」という。典型例は動物がひとの言葉を話したりするものだ。その場合、語尾に擬声語がついている。犬「~へ行きたいワン」。猫「~が欲しいニャン」。うさぎ「~するんだピョン」。ん?ちょっと待った。うさぎは「ピョン」とは鳴かないだろう!2万円台に、ぴょんと、いや違った、ぽんと跳ね上がった日経平均、この先の展開は果たして、「ガンガン」か「スルスル」か。濁点がつけば「ズルズル」もある。商売柄、相場の先行き見通しに関して取材を受けることが多いが、いつか「擬音語」で答えてみようかな。その場合、「ハラハラ、ドキドキ」が正解だろう。上げでも下げでもどちらにも使える。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆