チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
【新潮流】夏休み特別連載 第2回 目の色
◆西銀座青目赤爪白日傘 (残雪)
漢字だけで書かれた俳句というものは、いくつかあるが、押韻も読み下しも漢字のみで完成している句というのは多くない。これなどは稀有な傑作だろう。夏の銀座の華やぎがカラフルに表現されている。ここで「青目」はもちろん西洋人の目の色だ。
◆ちょうど3年前のコラムでこんなことを書いている。<資本市場では「黒目」「青目」という言葉があった。債券の発行体を表す業界用語で、「黒目」は日本企業、「青目」が外国企業を指した。「茶目」というのもあって、これは「○○インターナショナル・ファイナンス・ロンドン」みたいな日本企業の現地法人を指した。外国企業なのだけど中身は日系、というわけだ。>「投資の潮流」2012年8月14日地の利(現在非公開)
◆一時、デフォルト懸念が取沙汰されたギリシャのサムライ債。サムライ債とは「青目」の発行体が東京市場で起債する円建て外債のことだ。同じ「青目」による日本での起債でも外貨建ての場合はショーグン債という。ギリシャが負ったIMFに対する債務は返済されなかったが、民間向け債務であるサムライ債は無事に償還された。「サムライ」だけに、返済できなければ「腹切り」を迫られると恐れたわけでは、まさかなかろう。
◆炎天下の銀座を歩けば目につくのは中国人観光客ばかり。これでは、「黒目赤爪白日傘」だ。青・赤・白だからトリコロール・カラーの華やぎがある。黒では、どうも、ぱっとしないではないか。まあ、この際、目の色にはこだわるまい。青い目の外国人は引き続き日本株を買ってくれている。黒い目の外国人はインバウンド消費で内需に貢献してくれる。青目も黒目も大切なお客様だ。この流れを途絶えさせないことだけでなく、2020年に向けてさらに加速させていけるように、より魅力的な東京の街づくりをすすめるべきだ。それこそ、目の色を変えて取り組む優先課題である。
◆と、意気込んだのはいいが、目下の難題はこの猛暑。こう暑くてはかなわない。こんな時は冷たいものが恋しくなる。甘い雰囲気も伴えば、なおよろしい。
兄以上恋人未満掻氷 (黛まどか)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆