新潮流

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。

広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

【新潮流2.0】 第21回 アークヒルズの春

◆前回、当社の引っ越しの話を書いた。5年過ごした麹町から六本木のアークヒルズにオフィスを移転した。麹町もそれなりの風情があって好きだが、やっぱりアークヒルズはいい。日本の金融センターは丸の内・大手町に違いないが、アークヒルズを中心とする赤坂~六本木一丁目界隈もまた新たな金融街としての風貌を持つようになってきた。

◆だが、「アークヒルズ」と聞いて金融街と思うひとは少ないだろう。アークヒルズと言えば、カラヤン広場やサントリーホールに代表される「音楽の街」である。サントリーホールの開館は1986年だから昨年で30周年。現在は改修工事に入って休館中だが、秋には再開される。魅力的なプログラムが並んでいて今から待ち遠しい。仕事を終えたら歩いて直ぐにコンサートホールに行けるのは、なによりの贅沢だ。

◆今度の週末は3.11、東日本大震災から6年である。震災当日、新進気鋭の指揮者、ダニエル・ハーディングは新日本フィルを指揮し、マーラーの5番を演奏した。徒歩などでたどり着いたわずか100人余りの聴衆の前で。僕はもちろんその演奏に立ち会っていないが1年後、NHKの『3月11日のマーラー』という番組で観た。ハーディングはこう語っていた。

「この交響曲は人間の永遠のテーマである生と死、そして悲劇、それも、とてつもない悲劇で始まります。そこからマーラーは我々を明るく幸せで穏やかな場所へと導きます。最悪な状況をもたらした後で、それを生き抜くようにと励ますのです。」

◆相場もまた人間の「生」であり「業」である。とてつもない悲劇もある。だが、そこから明るく幸せで穏やかな場所へと導くこと。それもストラテジストの仕事のひとつではないか。マエストロにはなれないが、最悪な状況の後でも、生き抜くようにと励まし、指針を示せるストラテジストになりたい。

◆季節は廻り、気が付けば桜の開花までひと月もない。近年、花見は千鳥ヶ淵だったが、今年からは霊南坂とカラヤン広場に変わる。アークヒルズで桜吹雪を浴びると、シンフォニーが聴こえる気がするのが不思議である。アークヒルズの桜もまた待ち遠しいもののひとつ。春よ、早く来い。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

【お知らせ】「メールマガジン新潮流」(ご登録は無料です。)

チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから

レポートをお読みになったご感想・ご意見をお聞かせください。

過去のレポート


マネックスレポート一覧

当社の口座開設・維持費は無料です。口座開設にあたっては、「契約締結前交付書面」で内容をよくご確認ください。
当社は、本書の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。本書の内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。