チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、投資戦略の考え方となる礎をご紹介していきます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
【新潮流2.0】 第24回 昭和は遠くなりにけり
◆AKB48の小嶋陽菜さん(29)が先週19日、東京・秋葉原のAKB48劇場でメンバーとして最後の公演を終え、グループを「卒業」した。僕が目にしたニュースには、「昭和生まれのメンバーがゼロに」というサブタイトルがついていた。これでAKB48のメンバーは全員が、株価が下落する過程で生まれ育ったひとばかりになった。日経平均の史上最高値は平成元年。その翌年からバブル崩壊、失われた20年の長期低迷相場が始まった。
◆日経平均の大天井は平成の世がスタートした年の大納会。だが実はそれより2年半以上も前に「バブル的な」銘柄はすでに天井を打っていた。野村証券も大和証券も1987年4月20日が最高値である。当時のバブル相場を代表する銘柄のひとつが東京電力。配当利回り株であるはずの電力株が倍々ゲームのように上げていき、ついには9000円超の高値に達した。それが1987年4月22日のことであった。
◆もうひとつ、当時のバブルの象徴はNTT株だった。「政府が売り出す株で損をするはずがない」。個人投資家の間でNTT株ブームが巻き起こった。IPOからわずか2カ月で株価は最高値の318万円に駆け上がった。その高値をつけた日が1987年4月22日。奇しくも電力や電信電話といった社会インフラを担う公益株がバブルマネーで高騰し、そのバブルを演出した証券会社の株価とほぼ同時期に最高値を打った。それが1987年の4月20日頃、ちょうど今から30年前のことであったのだ。
◆来年には天皇陛下が退位され平成の世は30年で終わりを告げる。新しい元号からすれば「昭和」は2世代も前になる。だが、世相や流行が変わっても、人間の本質はそう変わらない。いくらAIやロボットや最先端のコンピューターが売買する相場になったとしても、その背後には人間がいる。だとすれば、相場の本質も同じく変わらない。だから、またいつか狂乱のバブルは起きるだろう。30年前を思い出し、「昭和は遠く...」などと感慨に浸っている間にもすでにバブルの芽は生まれているのかもしれない。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆