米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

見出しほど悪くはないが、6月利上げの可能性を低めた雇用統計

非農業部門雇用者数 3月 +12.6万人 市場予想 +24.5万人 前月 +26.4万人(下方修正)
失業率 3月 5.5% 市場予想 5.5% 前月 5.5%

■非農業部門雇用者数はネガティブ・サプライズ

3日に発表された米国雇用統計のヘッドラインは一言で言うと、「ネガティブ・サプライズ」だった。最も注目を集める非農業部門雇用者数は前月差12.6万 人増と市場予想(24.5万人増)の半分程度の増加にとどまった。また、2月分が29.5万人→26.4万人、1月分が23.9万人→20.1万人と計 6.9万人下方修正された。また、合わせて発表された失業率は5.5%と前月から横ばいだった(グラフ参照)。さらに労働参加率は62.7%と前月から 0.1ポイント低下した。

雇用統計は非農業部門雇用者数を見れば明らかなように、良い内容ではなかった。ただ、ヘッドラインほどのネガティブな内容ばかりかというと、そうではな く、労働市場の質的改善が見られた点もあった。また、非農業部門雇用者数についても悪天候がやや労働市場の減速を過大に見せた可能性もある。順にご紹介し ていこう。

■上昇率が加速した平均時給・大きく減少した長期失業者数

労働者の時間あたり賃金は24.86ドルと前月比0.3%の増加、前年同月比2.14%の増加で市場予想を上回った(グラフ参照)。前年同月比の伸び率は 2011年以降の平均である2.01%を上回っており、著しいとは言えないまでも労働市場の質的改善を見て取ることができた(グラフ参照)。

また、イエレンFRB議長が重視するとされる通称「ダッシュボード」と呼ばれる労働関連指標の一部にもポジティブな変化が見られた。まず、「本来は正社員 としての職を希望しているにもかかわらず、経済的事情でやむを得ずパートタイマーとして働いている人」を失業者としてカウントする、最も広い意味での失業 率「U-6失業率」が、10.9%と前月の11.0%から0.1ポイント改善し、金融危機発生後の最低を更新した。

さらに、失業者のうち失業期間が27週を超えている「長期失業者数」が256万3000人と、前月から14万6000人減少した。この減少幅は昨年8月に前月から20万人減少して以来の大きな減少幅である(グラフ参照)。

このように、非農業部門雇用者数のヘッドラインだけを見れば米国労働市場に異変が起こった日のように思われるが、実は詳細を見ていくと、ポジティブな指標も散見される。さらに、非農業部門雇用者数の伸びの鈍化も一定部分は天候要因で説明できる。

米国労働省統計局(BLS)は悪天候によって就業不能となった人数を毎月発表している。3月分は18万2000人と、2005年から2014年の10年間 の2月の平均15万人より、3万人ほど多い。もちろん天候要因だけで、非農業部門雇用者数の鈍化の全てを説明できるわけではないが、労働市場の実態よりも やや悪く出すぎている可能性を指摘できるということだ。

■6月利上げの可能性は低下したと考えるのが妥当

これまでご説明してきたように、非農業部門雇用者数の増加幅が市場予想をはるかに下回るものだっただけに、米国の労働市場に劇的な異変が起きたように伝 わっているが、実態としては「確かに非常に良いわけではないものの、一方で強烈に悪い内容であるわけでもない」といったことが指摘できる。ただ、一歩ひい て俯瞰的に考えてみると、FOMC(連邦公開市場委員会)が6月の利上げを決断する可能性は低下したと言って良いだろう。

これまでイエレンFRB議長は利上げの決定について、事あるごとに「経済指標次第であり、あらかじめ決まったスケジュールはない」と強調してきた。そして そのイエレン議長がもっとも重視する労働市場の経済指標が悪化したのである。さらに、以前から当レポートでお伝えしているように、小売売上高など個人消費 関連、ISM製造業景況感指数、中古住宅販売件数などここへきて発表された重要な経済指標は冴えない内容が目立つ。もちろんここから急回復する可能性もあ るが、6月に利上げを決定するには4月・5月の経済指標を見て決めるということになるため、それまでに指標が急回復する蓋然性は高いとはいえない。

筆者はこれまで労働市場の強さを理由に6月の利上げが最も有力であるとの考えをお示ししてきたが、労働市場やその他の指標の悪化を受け考えを変更し、早くても利上げは9月ではないかと考えている。

用語解説

雇用統計(米国)

米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

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