米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計直前レポート~9月利上げへの確度高めるか~

ADP雇用統計(前月差) 6月 +23.7万人 市場予想 +21.8万人 前月 +20.3万人(上方修正)
(予想)非農業部門雇用者数 市場予想 +23.3万人  マネックス証券 +25万人 
ISM製造業景況感指数 6月 53.5 市場予想 53.2 前月 52.8
新車販売台数(年率換算) 6月 1716万台   前月 1779万台

■非農業部門雇用者数は25万人増を予想

2日の日本時間21時半に米国雇用統計が発表される。通常は月初金曜日の発表だが、今月は3日金曜日が休日の関係で前日発表となっているのでご注意いただきたい。

米雇用関連会社のオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が3日に発表した雇用統計の先行指標であるADP雇用統計で「民間非農業部門雇用者数」は前月差23.7万人増と、前月から伸びが加速し、市場予想(21.8万人増)を上回った(グラフ参照)。前月分も20.1万人増→20.3万人増に小幅に上方修正された。

ADP雇用統計の結果は米国の労働市場が堅調な回復軌道を維持していることを示唆するもので、今夜発表の非農業部門雇用者数も堅調な数字となる可能性を高めた。また、労働市場の先行指標である新規失業保険申請件数は依然として減少(望ましい)傾向を続けており(グラフ参照)、労働市場の回復が鈍化するような兆しは見受けられない。

マネックス証券では過去2ヵ月連続で、非農業部門雇用者数がADP雇用統計を上回る雇用者数の伸びを見せていることを考慮し、市場予想よりやや強気な前月差25万人増を予想している。

今回の雇用統計では非農業部門雇用者数の他に、将来のインフレ圧力となる平均賃金の上昇率への注目度も高い。5月分の平均賃金は前年同月比2.3%の上昇と市場予想を上回った。市場予想では6月分も前月同様、前年同月比2.3%の伸びが見込まれているが、それを上回るような伸びが見られれば、FRBが利上げ開始の条件として打ち出している「労働市場の一段の改善」が進んでいると意識され、9月利上げの思惑が高まることになろう。

■ISM製造業は底入れが鮮明に

1日に発表されたISM製造業景況感指数は53.5と前月の52.5から改善し、市場予想の53.2も上回った(グラフ参照)。冬場に落ち込みの大きかったISM製造業指数だが、ここへきて底入れ、回復加速が鮮明になってきた格好だ。

昨年8月につけた58.1の高水準にはまだ遠いが、このまま改善基調が続けば7-9月の企業決算への期待が高まり、株式市場にもプラスとなりそうだ。なお、足下で鈍化傾向がみられる非製造業指数は6日の月曜日に発表される。

■新車販売台数も好調を保つ~米国株は再び上昇軌道入りか~

6月の新車販売台数は年率換算1716万台と10年ぶりの高水準だった5月からはやや販売台数が鈍化したものの、6月の販売台数としては2005年以来の高水準と依然好調な販売を保っている(グラフ参照)。

米国GDPの7割を占める個人消費の先行指標である同指数が好調を保っていることは、当然米国経済の先行きを楽観的にさせるものであり、株式市場にとってもポジティブな材料だ。

当レポートや「米国株 Market Pick Up 今週の注目ポイント」では、米国の経済指標や企業収益の伸びが冴えないことを背景に、今年に入って米国株にはやや弱気な見通しをお示ししてきた。結果的にダウ平均のパフォーマンスは昨年末からマイナスであり、概ね想定通りの値動きであった。

ただ、上述してきたように米国の経済指標はここへきて改善が加速する傾向が見られる。利上げという一大イベントを控えていることから米国株の先行きに悲観的な見方もあるが、イエレンFRB議長やその他のFRB関係者が今回の利上げペースはゆっくりとしたものとなることを強調していることから、利上げが米国株の上昇を大きく阻害する可能性は低いのではないかと考えている。出遅れが顕著な米国株に資金が向かい、ダウ平均が1万8500ドルから1万9000ドルといった水準を目指す時期が近づいているのではないだろうか。

■用語解説

雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

ISM景況感指数
ISM(Institute for Supply Management 供給管理協会)が発表する景気転換の先行指標である。供給管理協会が企業の担当者にアンケート調査を実施して作成しており、主要経済指標の中ではいち早く発表されることから景気の先行指標として重要視されている。数値が50を上回れば企業の景況感が好転、50を下回れば悪化していることを示す。製造業、非製造業それぞれ別に指標が発表される。

新車販売台数
オートデータ社が毎月月初に前月分を発表する米国の新車販売台数。販売台数は個人消費動向の確認に加えて、関連部品などが多岐にわたり製造業全体に影響をあたえるため注目を集める。

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