米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計の結果~9月利上げなのか~

非農業部門雇用者数 6月 +22.3万人 市場予想 +22.5万人 前月 +25.4万人(下方修正)
失業率 6月 5.3% 市場予想 5.4% 前月 5.5%
労働参加率 6月 62.6% 前月 62.9%
U-6失業率 6月 10.5% 前月 10.8%
平均時給(前年同月比) 6月 +2.0% 市場予想 +2.3% 前月 +2.3%

非常に良いとはいえない雇用統計

2日に発表された6月の米国雇用統計は良い点、冴えない点まちまちだったが、特段9月利上げ開始や年内2回の利上げの確度を高めるような強い内容ではなかった。順にご紹介したい。

まず、非農業部門雇用者数は前月差22.3万人増と市場予想の22.5万人増を小幅に下回った。また、5月分は28万人増から25.4万人増へ、4月分は22.1万人増から18.7万人増にそれぞれ修正され、累計では6万人の下方修正となった(グラフ参照)。マネックス証券では6月の非農業部門雇用者数について25万人増程度を予測していたが、実際は下回る結果となった。

失業率は5.3%と前月から一挙に0.2%改善した。ただ、この失業率低下の要因は労働参加率が62.6%と前月から0.3%悪化したことが大きい。6月の失業者数は前月から37.5万人減少したが、民間部門の雇用者数も前月から5.6万人減少している。つまり、減少した失業者の多くは職に就いたわけではなく、職探しを諦めた結果失業者のカウントから除かれ、それによって失業率が低下した可能性が高い。

以前にも本レポートで触れたことがあるが、失業率は失業者÷労働人口(15歳以上の働く意欲のある人)で計算されるので、実質的な就業者数が増加していなくても、職探しを諦めてしまった人が労働人口から除かれれば失業率は改善する。

例えば失業者10人、労働人口100人(就業者90人、失業者10人)であるとき、失業率は10÷100×100=10%である。一方、もし失業者10人のうち4人が職探しを諦めてしまえば、失業者から4人が除かれることとなる。
(10-4)÷(100-4)=6÷96=6.25%と実質的には労働市場の改善が起きていないにもかかわらず失業率は減少する。

以上のように今回の失業率の低下は労働参加率の低下によるところが大きく、失業率の低下は手放しで喜べる内容ではない。

期待に大きく及ばなかった平均時給

発表された従業員の平均時給は24.95ドルで前年同月比2.0%増と市場予想の2.3%増を下回り、前月からは横ばいだった。労働市場の質的改善を表す指標として特に期待が高かっただけに、予想を下回った失望が大きかったようだ。

好材料もあった

これまでは市場の期待に届かなかった各指標をご紹介してきたが、期待以上の改善を見せた指標もあった。

まず、正社員を希望しているにもかかわらずやむを得ずパートタイム労働を行っている人を失業者にカウントする「U-6失業率」が前月の10.8%から10.5%に低下した。また、27週以上の長期間に渡って失業者となっている人数が前月から38.1万人の減少と2011年6月以来の大幅な減少幅を記録した。冒頭でご紹介した非農業部門雇用者数の増加数も20万人増を上回っており、水準自体が悪いわけではない。ただ、筆者には全体を通してFRBが利上げの条件として挙げている「労働市場の一段の改善」を確信させる強い内容には思われない。

引き続き9月利上げ開始の可能性は残されているが、これまでに比べてやや弱まったと見るのが妥当ではないだろうか。

用語解説

雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される

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