米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)
世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
やはり、利上げ見送り。じゃあ、いつやるの?
■利上げを見送ったFOMC
16日から17日にかけて行われた連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ開始は見送られた。筆者は前回のレポートで、混迷が深まったマーケット動向、そしてそれが示唆する可能性のある世界経済の変調を根拠に利上げは見送られるのではないと記していたが、概ねそのとおりの結果となった。
では具体的にFOMCはなぜ利上げを見送ったのだろうか?中国をはじめとした新興国の景気減速懸念、また足下のマーケットの混乱が米国の実体経済やインフレ率に与える影響を懸念した、というのは確かなようだ。FOMCの声明文で、これまでにはなかった以下の一文が追加された。「Recent global economic and financial developments may restrain economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term.」(最近のグローバル経済や金融の動向が経済活動をいくらか抑制するかもしれず、短期的にインフレ率に低下圧力を与える可能性がある。)さらに、次の表現も前回の声明から付け加えられた。「but is monitoring developments abroad.」(海外動向を注視している。)
このように、海外情勢が米国経済に悪影響を与えることを懸念したことが、利上げ見送りの大きな要因である。イエレンFRB議長は声明発表後に行った記者会見で、景気後退からの回復は十分で、「現時点で利上げに踏み切る根拠になるほど個人消費は底堅い」という主旨の発言を行った。インフレ過熱を防ぐために利上げに踏み切りたいが、世界経済の鈍化リスクを考慮するともう少し様子を見てから判断したいというのが本音のようだ。なお、リッチモンド連銀のラッカー総裁は利上げすべきと投票し、利上げ見送り9票、利上げ開始1票での結果となった。
■マーケットの反応
声明文発表からイエレン議長の記者会見まで、米国株式市場は大きく変動した。ダウ平均は、声明発表後しばらくは利上げの見送りを好感して上げ幅を拡大し、一時は200ドル高近くまで上昇した。ただ、記者会見でイエレン議長が10月利上げを排除しないといった見解を示したことなどからマイナスに転じ、結局65ドル安で終えた。2年債利回りは利上げが見送られたことを受け大きく低下、ドル円も円高に振れた(グラフ参照)
■今後の利上げ時期は?
イエレン議長は、引き続き多くのFOMC参加者が年内の利上げを見込んでいることを明らかにした。足下の失業率は5.1%とFRBが下限と考えているらしい4.8%に近づきつつある。世界経済に大きな変調が見られなければ、12月までには利上げが行われるだろう。
では10月と12月どちらの可能性が高いかといえば、やはり12月ということになる。次回FOMCが行われるのは10月27日、28日だがあと1ヵ月強で世界経済の鈍化が米国に悪影響を与えるかどうかを判断するのは難しいとみられるからだ。FRBは12月に利上げに踏み切り、それまではマーケットにアク抜け感が出ず、ダウ平均は1万7000ドル程度の推移が続く。そのように考えている。
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