米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

心配なのは海外~雇用統計直前レポート~

ADP雇用統計(前月差)9月 +20.0万人 市場予想 +20.0万人 前月 +18.6万人(下方修正)
(予想)非農業部門雇用者数 9月 市場予想 +20.1万人 マネックス証券予想 +20.0万人
ISM製造業景況感指数 9月 50.2 市場予想 50.6 前月 51.1
新車販売台数(年率換算) 9月 1817万台 前月 1781万台

雇用統計は堅調予想

2日の日本時間21時半に米国雇用統計が発表される。9月30日に発表された雇用統計の先行指標であるADP雇用統計の民間部門の雇用者数は前月差20.0万人増と市場予想と一致した。前月は19.0万人増から18.6万人増に小幅に下方修正された。雇用者増が労働市場の堅調な回復の目安とされる20万人に達したことは好材料である。また、週次で発表されている新規失業保険申請件数を見ても、(望ましい)減少傾向を続けており、米国の労働市場の改善トレンドに変化がないことを示している(グラフ参照)。マネックス証券では9月の非農業部門雇用者数はADP雇用統計と整合的な20万人程度を予想している。

9月分の雇用統計で非農業部門雇用者数や失業率以上に注目度が高いのが、平均時給の伸びである。イエレンFRB議長は労働市場の回復に自信を持っており、労働市場の回復という観点から見れば、利上げに踏み切ってもおかしくない。ただ、もちろん原油安という要因が大きいものの、インフレ率はFRBの目標とする2%に届いていない。そこで注目されているのが将来のインフレ圧力となる、労働者の給与である。8月分は前年比2.2%の伸びであったが(グラフ参照)、市場予想では9月分は2.4%の伸びとなると予想されている。平均時給が市場予想と同水準の高い伸びとなれば、改めて年内利上げが意識され、ドル高を招く可能性がある。逆に、市場予想に達せず2%~2.2%の範囲内であれば、利上げ観測は高まらず、ドルに下落圧力がかかる可能性がありそうだ。


ISM製造業景況指数の低下が示す海外経済の不振

10月1日に発表されたISM製造業景況感指数のヘッドラインは50.2と市場予想の50.6を下回って3ヵ月連続での低下となり、景気好転と悪化の境目となる50が目前に迫った。ヘッドラインの構成項目を見ても、内容が良くない。グラフに示したとおり、ヘッドラインを構成する5項目のうち、「在庫」が前月から横ばいだった以外は、すべての項目が前月から悪化した。中でも「新規受注」は前月の51.7→50.1に下落し、50割れが目前である。また、ヘッドラインの構成項目ではない「輸出」についての調査も48.5と前月から横ばいで、依然として50を下回る低水準だ。

ISM製造業景況感指数の低下は海外経済の低迷を示唆している可能性がある。後述するが、9月の米国の新車販売台数は10年来の高水準で、個人消費は堅調だ。上述したように労働市場も堅調で、米国経済は依然として好調を維持している可能性が高い。ただ、9月のFOMCで利上げが見送られたのは、世界経済や中国経済の鈍化が米国の物価に下押し圧力となる可能性が懸念されてのことだ。足下でそれが払拭されていない以上、10月利上げの可能性は低く、利上げは早くて12月だろう。

絶好調だった新車販売台数

9月の新車販売台数は年率換算1817万台と2005年7月以来10年ぶりの高水準で、絶好調だった(グラフ参照)。2005年7月の販売台数は2048万台だが、その前月の6月は1793万台、翌月の8月は1691万台だったことから、何らかの特異値だった可能性が高い。そう考えると、この9月の販売台数の好調さが際立ち、米国の国内消費の好調さが伺える。

これまで繰り返し述べてきたとおり、足下の米国経済は好調に推移している。それを根拠に米国株の下落局面は中長期的に見てエントリーして良い水準であるとの考えに変わりはない。ただ、中国経済の減速の度合いがはっきりし、FRBが利上げを行うまでマーケットにアク抜け感は出ない。そして、利上げが行われるのは早くて12月のFOMCだろう。年内はダウ平均が16,000~17,000ドルの推移となるのをメインシナリオとして、世界経済の一段の鈍化が明らかになれば16,000ドル割れというのもシナリオに入れておくべきだと考えている。

用語解説

雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

ISM景況感指数
ISM(Institute for Supply Management 供給管理協会)が発表する景気転換の先行指標である。供給管理協会が企業の担当者にアンケート調査を実施して作成しており、主要経済指標の中ではいち早く発表されることから景気の先行指標として重要視されている。数値が50を上回れば企業の景況感が好転、50を下回れば悪化していることを示す。製造業、非製造業それぞれ別に指標が発表される。

新車販売台数
オートデータ社が毎月月初に前月分を発表する米国の新車販売台数。販売台数は個人消費動向の確認に加えて、関連部品などが多岐にわたり製造業全体に影響をあたえるため注目を集める。

(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。

レポートをお読みになったご感想・ご意見をお聞かせください。
ご質問の場合は、「レポート名」を明記のうえ、以下より投稿してください。

過去のレポート


マネックスレポート一覧

当社の口座開設・維持費は無料です。口座開設にあたっては、「契約締結前交付書面」で内容をよくご確認ください。
当社は、本書の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。本書の内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。