米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

FOMCでの利上げの可能性と予想される市場の反応

再び利上げが議論されるFOMC

27日から開催されている連邦公開市場委員会(FOMC)の声明発表が日本時間29日午前3時に行われる。当然、9月のFOMCに続いて利上げを実施するかどうかが議論されることになる。ただ、結論から言うと、今夜のFOMCで利上げが決定される可能性は非常に低い。

その第1の理由は、9月FOMCでの利上げ見送り理由である。FOMC後の記者会見で、イエレンFRB議長は利上げ見送りの理由を「世界経済や中国経済の鈍化が米国経済に与える影響を見極めたい」との主旨の発言を行った。前回FOMCから本日までまだ1ヶ月強しか経過していない。マーケットは一時の過度の不安からは立ち直りを見せているが、10月に入ってIMFが世界経済の成長見通しを引き下げる(表参照)など、問題の根本的な解決からは程遠い。もし今回の会合で利上げを強行した場合、前回の見送り理由と齟齬をきたす可能性があり、そのような判断をFOMCがくだすとは考えにくい。

第2の理由は、足下の経済指標の弱さである。10月2日に発表された9月分の雇用統計のヘッドラインは低調だった。非農業部門雇用者数が前月差14.3万人増と堅調な回復の目安とされる20万人を大きく下回り、7・8月分も計5.9万人下方修正された。賃金の伸びも市場予想を下回り、伸びが加速する状況にはない。広義の失業率U-6失業率が前月から0.3%改善するなど、決して悪い内容ばかりではなかったが、少なくともFRBが利上げを急がねばと思うような内容からはほど遠かった。また、ISM製造業指数が改善と悪化の境目となる50割れ寸前、小売売上高も下振れと重要な経済指標の中に低調な指標が散見されている。

後述するようにFRBの高官たちは、繰り返し「年内利上げ」がメインシナリオであることを強調してきた。ただ、12月にもFOMCが開催される以上、今回のFOMCで利上げを強行するメリットはほとんどないとみられる。10月は利上げ見送り、と考えて差し支え無いだろう。

では今回のFOMCの注目点はなんだろうか。それは、年内利上げについて声明文でどのようなメッセージが送られるかである。

声明文でのメッセージに注目

前述したように、筆者は10月利上げの可能性はほとんどないと考えているが、FRBの高官たちは、年内利上げにこだわる姿勢を崩していない。以下は10月に入ってからのFRB高官の発言の一部を示したものだ。これらの発言は弱かった9月分の雇用統計発表後の発言であり、依然として年内利上げの実施への強い意欲を示している。タルーロ理事が「年内の利上げは適切ではない」と発言するなど、FRB内でも意見は分かれているようだが、全体としては現時点ではFRBは年内利上げをメインシナリオとしているとみられる。

では声明文ではどのようなメッセージが送られるだろうか。まずはこれまでどおり「経済指標次第である」という点が強調されるだろう。当然、「12月に行うor行わない」といった明確な表現は採用されないとみられ、年末までに強い経済指標が発表されれば利上げ、そうでなければ利上げ見送りと解釈される表現が採用される可能性が高い。ただ、具体的なメッセージ内容の予想は難しいが、意識しておくべきは声明文を受け年内の利上げの可能性が大きいと市場が意識する表現が盛り込まれた場合である。

チャートは8月以降のダウ平均と米国2年債利回りの推移を示したものだ。9月のFOMCで利上げが見送られ、2年債利回りは大きく低下したが、株価は軟調推移が続いていた。ところが10月2日の雇用統計の発表が低調に終わったことが、株価が急反発するきっかけとなった。

1万6000ドルどころにあったダウ平均は1ヵ月たたないうちに10%ほど反発した。これは雇用統計が冴えなかったために、利上げが年明け以降に後ズレするとの見方を市場が強めたと解釈できるだろう。

10月のFOMC声明文で、年内利上げの可能性が高いと市場が意識すれば、大きく反発した米国株の利益確定売りのタイミングとなっても不思議ではない。若干の調整リスクを意識しておくべき局面と言えるのではないか。

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