米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

いざ、最後の雇用統計へ

ADP雇用統計(前月差) 11月 +21.7万人 市場予想 +19.0万人 前月 +19.6万人(上方修正)
(予想)非農業部門雇用者数 11月 市場予想 +20.0万人 マネックス証券予想 +20.0万人
ISM製造業景況感指数 11月 48.6 市場予想 50.5 前月 50.1
ISM非製造業景況感指数 11月 55.9 市場予想 58.0 前月 59.1

市場の期待に及ばなかったECBの追加金融緩和

3日に発表された欧州中央銀行(ECB)の追加金融緩和策は、市場の予想に及ばなかった。発表を受けユーロは大きく上昇し、欧州株は大きく売られた(グラフ参照)。

10月に開催されたECB政策理事会後の記者会見でマリオ・ドラギ総裁は、12月の理事会で追加金融緩和に踏み切る姿勢を表明していた。これまで市場を度々驚かせて「ドラギ・マジック」、「スーパー・マリオ」などと呼ばれるなど、卓越した金融政策の手腕を持つドラギ総裁だけに市場の期待は大きく高まり、前回の理事会後にユーロ安・株高が進んだ。

これまでECBが行ってきた主な金融緩和政策は、中銀預金金利(民間銀行が中央銀行に資金を預ける際の金利)をマイナス(マイナス0.2%)にする、量的緩和(月間600億ユーロの資産購入を2016年9月まで実施)などだった。今回の会合ではマイナス金利のさらなる引き下げ、月あたりの資産購入額の増額、購入期限を無期限とする、といった案が予想されていた。

昨日実際に発表された緩和策は、(1)中銀預金金利の引き下げ(マイナス0.2%→マイナス0.3%)(2)量的緩和の期間を半年間延長(2016年9月→2017年3月)(3)量的緩和の購入資産を地方債まで拡大(4)償還した購入資産の再投資などであった。中銀預金金利の引き下げは行われたが、引き下げ幅は市場予想通りであり、資産購入額は変更なく、市場の期待を裏切る結果となった。市場が勝手に期待を高めていたという側面もあろうが、ECBは市場との対話に失敗したと指摘されても仕方がないかもしれない。

FOMC前最後の雇用統計

そして本日(4日)、利上げ決定が濃厚とされる12月のFOMC前最後の雇用統計が発表される。先行指標である11月分のADP雇用統計は前月差21.7万人増と、市場予想の19万人増を上回った。また、10月分も速報値の18.2万人増から19.6万人増と上方修正された(グラフ参照)。

堅調だったADP雇用統計以外にも、毎週発表されている新規失業保険申請件数は減少(望ましい)傾向を続けており、米国の労働市場は堅調に回復している可能性が高い。

本日発表の雇用統計も堅調な数値が発表されて、12月利上げがいよいよ確実視される可能性が高いと考えている。マネックス証券では非農業部門雇用者数を前月差20万人増とみている。ブレの大きい指標であり、当然20万人増を下回る可能性も十分にあるが、10万人を割りこむような大幅な下振れでない限り、市場の12月利上げシナリオは崩れないだろう。

雇用統計で想定される市場の反応

本来雇用統計が堅調であれば、利上げが確実視されてドル高の反応が想定される。ただ、本日は昨日のECB発表の余韻を引きずったユーロ買いが継続する可能性もあり、反応を予想するのは特に難しい。一時的にドル高が進行しても、ユーロ買いの継続により反落しやすくさらに利上げは一定程度織り込まれているとみられるため、短期的にドルの上値はそれほどないのではないだろうか。

揃って悪化したISM景況感指数

米国の経済指標は好調といえるものばかりではない。1日に発表されたISM製造業景況感指数は、ヘッドラインが48.6と2012年11月以来3年ぶりに改善と悪化の境目となる50を下回った。ヘッドラインの構成項目をみても、新規受注が52.9→48.9、生産が52.9→49.2とともに50を割り込んでおり、内容も悪い。また、非製造業指数は55.9と50を大きく上回って入るものの、前月の59.1から大きく悪化した(グラフ参照)。

本来であればISM製造業指数が50を割れたということは、金融緩和などの景気刺激策が検討されてもおかしくない局面である。過去の実績からすると、当然利上げは見送られてもおかしくないが、イエレンFRB議長以下FRBの主流派たちは12月利上げへの姿勢を崩していない。まずはいったん利上げを行い、その後の利上げペースは極めてゆっくりとする、というのが彼らの市場へのメッセージである。

ただ、FRBとて未曾有の大規模な量的金融緩和、そして長期に渡ったゼロ金利の解除というのはFRBとて未経験の領域である。利上げ決定後に株価をはじめとしたリスク資産がどのような値動きとなるかは極めて不透明である。足下ではいったんリスク資産の比率を低くするという判断を行っても良い局面ではないだろうか。

用語解説

雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

ISM景況感指数
ISM(Institute for Supply Management 供給管理協会)が発表する景気転換の先行指標である。供給管理協会が企業の担当者にアンケート調査を実施して作成しており、主要経済指標の中ではいち早く発表されることから景気の先行指標として重要視されている。数値が50を上回れば企業の景況感が好転、50を下回れば悪化していることを示す。製造業、非製造業それぞれ別に指標が発表される。

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